廃水未処理の工場閉鎖 軍・警察とタッグ チタルム川沿い、摘発強化

 政府は、汚染が深刻な西ジャワ州のチタルム川に廃水を垂れ流してきた工場の摘発を強める。上流にある「繊維のまち」バンドンでは、未処理の工場廃水が長年放置されてきたが、行政は軍や警察と連携し、工場の閉鎖に乗り出した。川からは基準を超える有害物質が検出されており、環境団体は「排出される化学物質の情報公開をするべき」と指摘している。

 インドネシアでは有害・有毒廃棄物管理政令(2014年)などで工場排水を規制している。だが、西ジャワ州のアナン・スダルナ環境局長によると、工場の半数は廃水処理設備を持っておらず、川に垂れ流しの状態。基準を満たす廃水処理設備がある工場は全体の1割にすぎず、その1割でさえ、常に設備を稼働しているわけでないという。これがチタルム川の汚染原因の一つとして、長年問題視されてきた。
 これらの工場への行政の取り締まりは限定的だったが、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領は今月16日、7年かけてチタルム川の浄化に取り組むと発表。法に基づき、厳しく取り締まる考えを示した。
 西ジャワ州ではさっそく、廃水未処理の工場の閉鎖が相次いだ。同州警は22日、バンドン県で廃水処理設備を持たずに化学物質を使って服を洗っていた3社の閉鎖を発表。24日には繊維産業の中心地、同県マジャラヤで、チタルム川の支流に廃水を流していた繊維工場が閉鎖された。軍も本腰を入れて摘発に乗り出す構えを見せている。

■「汚染の情報公開を」

 2011年からチタルム川の水質汚染を調査してきた国際環境団体グリーンピースのアフマッド・アショフ・ビリー氏は「法の執行や工場閉鎖だけでなく、政府は情報公開を行っていく必要がある」と指摘する。
 グリーンピースの調査では、同川から基準値を超える六価クロムやカドミウムや水銀が検出されている。有害物質は川や田んぼに流れ、魚やコメにも含まれる。アショフ氏は「発がん性のある有毒物質も流れている」と問題視する。
 政府が川の浄化に本腰なのは喜ばしいが、大統領の呼びかけと軍の動員で、長年野放しにされてきた工場をどこまで摘発できるかは不透明。そこで提案するのが日本のPRTR制度を元にした情報公開だ。
 PRTR制度は大気や川へ排出される化学物質の量を事業者が申告し、ウェブサイトで公表する制度で、アフマッド氏は「どの工場が、どんな化学物質をどれだけ使っているのか見られるようにすることで、市民に工場の監視を務めてもらうことができる」と話す。
 6月に西ジャワ州知事選、来年には大統領選を控え、チタルム川浄化政策の政治的背景を指摘する声もある。「政府は30年以上、チタルム川を放置してきた。選挙が終わった後も政策を続行することが最も大切だ」と語った。(木村綾)

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