海外との共同研究に期待 新天文台は晴天率70% LAPAN所長に聞く
東ヌサトゥンガラ州ティモール島ティマウ山で、2018年半ばに建設が始まる国立天文台。約90年ぶりとなる天文台新設の経緯や意義を、インドネシア国立航空宇宙研究所(LAPAN)のトマス・ジャマルディン所長(55)に聞いた。
――新設のきっかけは。
第1の理由は、国内唯一の天文学研究所であるボスカ天文台(西ジャワ州バンドン県)が1980年以降、周辺部の人口増に伴う光害と大気汚染の影響で観測しづらくなった。雨期の長期化で、晴天率が建設当初の60%から40%まで下がったこともあり、観測に適した場所に天文台を建設することにした。
――候補地の調査は。
2000年ごろから天文台新設案が浮上し、バンドン工科大(ITB)の天文学者チームなどが07〜11年、候補地30カ所を調査した。調査内容は、大気のクリアさ、晴天率の高さ、乾期の長さなどだった。
――なぜティマウ山?
観測に必要不可欠な晴天率が年平均70%と高く、曇りやくすみがかった夜空が少ない。また、乾期が長く、国内でも乾燥した地域の一つでもある。
――観測、研究対象は。
世界的にみても赤道付近に位置する天文台は少ない。広い天域で銀河、太陽系外の惑星、彗星、恒星などを観測する。新小惑星、新彗星などの発見を目指した観測に加え、天体の温度や質量などを研究する天体物理学の研究を行う。
――望遠鏡の詳細は。
京都大が中心になって開発した口径3.8メートルの光学赤外線望遠鏡を設置する。現在はタイにある口径2.4メートルの望遠鏡が東南アジア最大。より高度な天体研究が可能になる。国内ではボスカ天文台にある口径60センチが最大だ。
――日本製望遠鏡の導入理由は。
18枚の小さな鏡を合わせて、1枚の大きな鏡として使うなど、新しいデザイン、技術が使われているため。(日本から輸入するため)軽さや組み立てやすさ、運びやすさもポイントになった。
――新天文台建設で期待することは。
国内外のさまざまな機関、大学との共同研究が活発になる。特に、北半球の国との共同研究で空のデータを共有でき、研究が進むことを期待している。日本との共同研究はまだ具体的に決まっていないが、北半球と南半球の天域の観測をシェアしながら研究を進めることになるだろう。(上村夏美、写真も)