スカルノの遺志、60年越し 新国立図書館
モナス(独立記念塔)広場の南側にオープンした国立図書館。構想自体は建国の父、スカルノ初代大統領政権の1952年にさかのぼる。
「モナスを取り囲むように博物館や美術館、劇場、図書館を造りたい」。建築家で読書家、芸術愛好家でもあった独立指導者スカルノ氏は当時、首都中枢部の開発について具体的な青写真を持っていた。図書館はイスタナ(大統領宮殿)の反対側に置き、モナス西側に博物館、東側に美術館と劇場を建設する計画だったが、これまで実現したのは博物館と美術館のみ。
スハルト政権(66〜98年)下の90年代には、劇場の建設予定地だった場所に国産車ティモール社のビルが建てられた。スハルト氏の三男トミー氏が仕切り、「独裁政権のファミリービジネス」と批判が集中した国家事業の拠点だ。現在、このビルは海洋水産省の本庁になっている。
博物館は1862年、オランダ統治時代に現在の場所に建てられた。19世紀初頭の英領時代に収集が始まった所蔵品を多数保管する。ただ、美術館の完成は1987年まで待たなければならなかった。
スカルノ氏の遺志を継ぐジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領は就任直後、新国立図書館の建設を決定し、2年半の工事を経て完成させた。
4階まで吹き抜けになっている中央ロビーには、歴代大統領の大きな肖像と関連書籍が陳列されたガラスケースが並ぶ。そこにはスカルノ氏の分厚い主著「革命の旗の下で」が置かれており、構想から60年以上の年月を経て実現した、イスタナと向き合う図書館が訪れた人々を迎えている。(配島克彦)