イ人1万人超が応募 「二重国籍」で議論も 宇宙国家の国民募集に
2016年に発表された宇宙国家「アスガルディア」設立プロジェクトの国民募集に応募しているインドネシア人は1万1787人(28日午後3時現在)で、全世界からの申請者28万2947人(同)の約4.2%を占めている。国・地域別では、トルコ、中国、米国に次いで4番目に多いが、二重国籍を認めないインドネシアの国籍法がプロジェクト参加の壁になるとの指摘がある。
プロジェクトは16年10月にパリで開かれた会議で、国連教育科学文化機関(ユネスコ)宇宙科学委員会の議長を務めるロシア人科学者イゴール・アシュルベイリ氏が発表、自ら主導している。ことし6月には、アスガルディア国際宇宙研究所長として、宇宙科学の研究・教育に関する協定をユネスコと結んだ。
これまでに研究者ら約1万人と30企業が携わり、写真など「アスガルディア国民」のデータを積んだ極小の人工衛星を年内に打ち上げ、宇宙国家の第一歩とする計画が進む。さらに国民が10万人以上集まった段階で国連に国家資格を申請する予定。
インドネシア国内で議論対象になっているのは国民申請にかかる条件。同プロジェクトのウェブサイトにある市民権の説明では「国民(18歳以上)となる場合、アスガルディアが国際条約として規定しない限り二重国籍にはならない」と表現している。
さらに、インドネシアの国籍法(2006年12号)23条も「他国籍を取得した場合、インドネシア国籍を失う」と規定、二重国籍を認めていない。このため、国立航空宇宙研究所(LAPAN)のトマス・ジャマルディン所長は26日、地元メディアに対し「インドネシア人は宇宙国家を信奉することはできない」と違法性を指摘し、「(アスガルディア国民のデータを積んだ)人工衛星打ち上げは可能だろう。しかし、宇宙にコロニー(入植地)を作って暮らすことはまだ夢の話だ」と冷や水をかけた。
宇宙国家「アスガルディア」の名前の由来は、北欧に伝わる神話で神々が住む空中都市「アスガルド」。
「アスカルディアン」と呼ばれる国民の国・地域別申請数は、トルコが4万2145人で最多。2位は中国で3万9420人、3位は米国で3万4155人、5位はブラジルで1万1358人。インドネシアと同様、二重国籍を認めていない日本は23位で1933人だった。申請数やプロジェクトの詳細はウェブサイト(https://asgardia.space)で確認できる。(中島昭浩)