下限10億ルピアに修正 財務省 銀行口座の報告義務化

 スリ・ムルヤニ財務相は8日、銀行などの金融機関に対し、預金残高が2億ルピア以上の口座を保有する個人顧客の金融情報などを税務総局に報告することを義務付ける大臣令について、下限を10億ルピアに修正すると発表した。中小企業や中間層の保有資産を徴税強化の対象にする方針に反発が噴出し、わずか10日間で下限額を変更する異例の決定を下した。

 預金保証機構(LPS)の4月時点のデータによると、国内の口座数2億688万のうち、預金額が2億ルピア以上の口座は全体の1.14%に当たる230万。10億ルピア以上は同0.23%の49万6千で、下限修正により180万が対象外になった。
 スリ財務相は5月31日付で大臣令(2017年70号)を発令し、報告義務のある預金残高は2億ルピアと規定した。財務省が掲げる徴税強化策の一環で、税務総局が金融機関に情報を開示させることでマネーロンダリング(資金洗浄)防止につなげる方針を示した。
 しかし2億ルピアの下限に反発が噴出。中小企業連合などは「国際的な基準で報告義務があるのは33億ルピア以上」と主張し、中小企業の経営者には下限を調整すべきだと訴えた。
 また、非政府組織(NGO)の税金正義フォーラムのマフトゥハン代表は「政府は富裕層の徴税強化でなく、中間層を標的にしている。所得税の税率が最高比率の30%になる年収5億ルピア以上に合わせるなど、関連法との整合性を持たせるべきだ」と主張した。
 経済金融開発研究所(INDEF)のラナ・ソエリスティアニングシフ・チーフエコノミストは監視対象が増え、実現性に疑問があると指摘、「当初の構想の下限は10億ルピア。なぜ2億ルピアになったのか理解できない」と批判していた。
 これに対し、スリ財務相は「口座残高の報告義務があるからといって、預金に課税するわけではない。税収確保のためには租税対象について把握しなければならない」と説明。ユスフ・カラ副大統領も「全ての国民が正しく納税することが重要」と下限の基準を論点にするべきではない考えを示した。
 しかし抵抗する声は強く、一転して下限を修正することを余儀なくされた。スリ財務相は8日、「一般市民の状況と公平性を考慮する」と理由を説明。昨年7月からことし3月まで実施したタックス・アムネスティ(租税特赦)で得たデータと共に、金融情報を有効活用していく姿勢を示した。
 対象となる口座保有者の報告期限は2018年4月30日。今回の大臣令は来年導入予定の金融口座情報交換に関する政令の細則となる。
 地場系大手銀行のバンク・インターナショナル・インドネシア(BII)頭取を務めた後、金融コンサルタント、JCヌサンタラ・インターナショナルに所属する只野宏さんは金融情報の報告について「世界中である動き」と説明。「税収不足に悩む中で、財務省がアドバルーンを上げた形になった。しかし、反発の声も強く実現は容易ではない。報告期限を延ばすなどの措置をとる可能性はある」と課題を指摘した。(平野慧)

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