年間5万2000ヘクタールが消失 「破壊は世界最速」 国際林業研究センターが警告 国内のマングローブ林

 国際農業研究協議グループに属する国際林業研究センター(西ジャワ州ボゴール市、CIFOR)は2日、ジャカルタで開かれたセミナーで、インドネシアはマングローブの破壊が世界で最も速いスピードで進んでいる国と警鐘を鳴らした。パーム(アブラヤシ)農園開拓やエビや魚の養殖、埋め立てなどにより、毎年5万2千ヘクタールが失われている。 

 CIFORの調査によると、インドネシアでは9万5千キロに及ぶ海岸沿いに約300万ヘクタールのマングローブ林が広がっている。これは世界で最も広く、世界全体の約2割を占めるが、うち4割が最近約30年間で消失した。
 CIFORでシニア・サイエンティストを務めるダニエル・ムルディヤルソさんは「年間5万2千ヘクタールは、1週間でサッカーグラウンド三つ分を失い続けていることと同じで、急速に破壊が進んでいる」と説明した。
 マングローブは主に、多様な生態系の維持や海岸浸食を防ぐ役割を果たす。地球温暖化のため、海面は年間約1.8ミリ上昇しているが、マングローブは年間約4ミリの泥炭堆積物を蓄積することができる。海水をろ過でき、海面上昇に耐えつつ海岸の浸食を防ぐこともできる。
 一方、マングローブ林があるジャカルタ特別州の北岸では現在、急速に進む地盤沈下への対策として巨大防潮堤(ジャイアント・シーウォール)と17の人工島を建設する首都統合沿岸開発(NCICD)が進められている。
 北ジャカルタのパンタイ・インダ・カプック沖に造られたC、D両島の沿岸部では、すでにマングローブが育ちつつあるが、ダニエルさんは「北ジャカルタ沿岸に防波堤を築くと、干満に大きく影響しマングローブの生態系を脅かす。ムアラ・アンケなど今あるマングローブ林を破壊するだろう」と警告した。
 インドネシアには、マングローブ生態系の管理・維持する戦略を定めた大統領令2012年第72号がある。しかし、管理・保護の具体的方策が明記されておらず、実効性に乏しいとされる。さらに気候変動対策のため、国が戦略や計画を作成する国家適応行動計画(RAN―API)に、マングローブの保全は含まれていない。
 CIFORの属する国際農業研究協議グループは1971年、世銀と国連食糧農業機関(FAO)を発起機関として設立された。活動目的は、農業研究を通じた貧困削減、農業研究システム強化、環境保全、生物多様性保護など。CIFORや国際稲研究所(フィリピン)など、16の国際農業研究センターで構成される。(毛利春香) 

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