オンラインで牛売買 食肉処理・デリバリーも 犠牲祭の喜捨 通販大手参入

 12日に迫ったムスリムの重要行事の一つ犠牲祭(イドゥル・アドハ)。喜捨(ザカート)用の牛やヤギの売買は伝統的な路上販売に加え、オンラインによるデリバリーサービスなどが好評で、気軽に喜捨ができると利用者が増えている。

 国家喜捨庁(BAZNAS)は2005年、オンライン喜捨プログラム「クルバン・デジタル」を開始。ことしに入り、喜捨を若い世代にも広げようと特別チームを結成した。
 アリフィン・プルワカナンタ長官は9日、じゃかるた新聞の取材に「開設後、オンラインでの喜捨は毎年30%増加している。インドネシアでは1年で約1.5兆ルピアの喜捨があるが、今後10倍の規模まで成長する」と語った。
 オンライン喜捨は、同庁のウェブサイトや、ネット通販大手のトコペディアやブリブリ・コム、地場系の大手交流サイト「カスクス」の売買ページを通しても利用できる手軽さが魅力。料金は送料や食肉処理代金込みで、重さ25キロのヤギが1頭250万ルピア。同250キロの牛は、1頭がヤギ7頭分と同額で1750万ルピア。喜捨はヤギ1頭分から行える。
 銀行やATMなどで支払い後に届くメールに、喜捨したい場所を記載して送信すると、牛やヤギの品質証明書とともに配送状況確認用のコードを配信。取り引きの透明性にも配慮している。
 喜捨庁は、国内全34州にある500を超える支部を通じ、喜捨がへき地の村々まで行き渡るようネットワークを整備した。牛やヤギは、顧客が希望する配送先にある同庁の提携酪農家で処理し、切り分けた肉を届ける。アリフィン長官は「昨年はヤギで数えると、オンライン喜捨で約1300頭分が届けられた。ことしは約3千頭分が目標」と述べた。
 また、各地の牛やヤギ販売所がオンライン喜捨サイトを立ち上げる動きもある。中央ジャカルタ・タナアバンのリドワン・ハルタニさん(32)は仲間のヤギ販売業者とサイト「クルバン・ストア」を14年に立ち上げた。ヤギは切り分けずにそのまま注文者に届ける。リドワンさんは「今は首都圏の酪農家数十人と協力している。彼らの販売の窓口になりたい」と話す。販売数は15年よりも好調だという。
 タナアバンのマスマンシュール通りでは、歩道での販売が最盛期を迎えている。ワリィさん(50)は、東ジャワ州マランから運んできた56頭の牛のうち17頭を9日朝までに販売した。同州の牛肉市場価格が1キロ9万5千ルピアから10万ルピアに上昇し、喜捨用の牛も200万〜250万ルピアほど上げざるを得ないという。
 ワリィさんはオンライン喜捨について「良い部分もあるので否定はできないが、実際に見て良しあしを見定めることで心がこもるのでは」と話した。(中島昭浩、写真も)

◇ 犠牲祭(イドゥル・アドハ) ムスリムにとって最も重要な行事の一つ。メッカ巡礼がピークを迎えるイスラムのヒジュラ暦12月10日。預言者イブラヒムが神アッラーから最愛の息子イスマイルを供犠としてささげるよう啓示を受け、短刀で切ろうとした時に羊に代わったというコーランの逸話に基づく慣習。信仰心を高めることを目的とし、犠牲に捧げた肉は貧しい人々や友人・知人に振る舞い(喜捨)、残りは家族で食べる。

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