着物をムスリムウエアに 和装老舗ツカモト 和素材融合に活路 バンドンの服飾学校と連携

 衰退傾向にある日本の着物をムスリムデザイナーの手によって発信しようと、繊維商社のツカモトコーポレーション(東京都中央区)がインドネシアで新たな挑戦に乗り出している。ことし開校したインドネシア初のムスリムファッション専門学校と連携し、若手デザイナーの育成も目指していく。

 1日、中央ジャカルタのショッピングモール「スナヤンシティー」で開かれた「ムスリム・ファッション・ウイーク」。ツカモトは国内初のムスリムファッション専門学校「イスラミック・ファッション・インスティテュート」(IFI、西ジャワ州バンドン)とコラボし、着物や和柄を取り入れたムスリムウエアを初披露した。
 同社は創業当初から200年にわたり、着物を取り扱ってきた老舗。扇谷英二経営企画部長は「着物を着る人が減っている中で、日本の伝統文化を守っていく使命がある。昔ながらの着物の着方だけでは守れないと思った」と話す。
 そこで目を付けたのが、肌やシルエットを隠す点で共通するムスリムファッションだ。日本ムスリムファッション協会に加盟しことし3月、初めてインドネシアを訪れた。
 7月には同社の社員や日本人デザイナーがIFIを訪問、ムスリムファッションへの理解を深めるとともに、同校の講師や学生に着物を紹介し、融合の可能性を探った。
 IFIは、バンドン出身の著名デザイナー、イルナ・ムティアラさんらがことし3月に開校した。
 イルナさんは着物について「美しい形で体を隠し、ムスリムファッションと通じるものがある」としたうえで、「重ねるスタイルが多いムスリムウエアには綿、シルク、リネンなど涼しい素材が好まれるのに対し、着物の生地は分厚く、重たい。通常の生地と組み合わせれば、ムスリムウエアへ応用できるのでは」と提案する。
 1日は、IFIの学生がツカモトの和柄生地を使ってデザインした作品のコンテストも実施した。
 IFIとのコラボは「私たちはムスリムでないし、現地の人の好みやセンスに合わせた方がよい」(扇谷さん)との考えから。デザイナーが育ち、和素材を使った服がインドネシアで展開できるようになれば、量販や輸出も視野に入れていくつもりだ。

■流通経路がない
 日本のファッション業界との違いも明らかになってきた。ツカモトと提携するデザイナーの山梨栄利子さんは「日本では卒業後、アパレル会社に就職する人が多いのに対し、インドネシアでは学生から自分のブランドを持ち、自分で縫って、ネットで販売するというのが当たり前。学生にパワーを感じた」と話す。
 同時に、「アパレルメーカーがほとんど存在せず、基本、デザイナーが個人で製造販売するため、流通経路がない」(扇谷さん)のが実情だ。
 販路を広げるのは容易ではないが、中東ドバイでも展開を目指してショーに参加するなど、同社が手掛けるムスリムファッションを各国で確立することを目指している。扇谷さんは「東京五輪が行われる2020年、インバウンド需要も目指したい」と語った。(木村綾、写真も)

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