【スナンスナン】国産カカオの深い味 南ジャカルタ ピピルティン・ココア

 南ジャカルタのバリト通りに小さなチョコレート工場がある。一歩踏み入れた瞬間、カカオの深い香りが漂う。チョコレート店「ピピルティン・ココア」は、ティサ・アウニラさん(37)が3年前に始めた。おいしい本物を多くの人に味わってほしいと国産カカオでのチョコレート作りに力を入れている。

 ティサさんはジャカルタ出身で、以前は弁護士だった。もともと焼き菓子をつくるのが大好きで、ある日、使っていたスイスチョコレートの原料をインターネットで調べたところ、インドネシア産のカカオだった。「とっても驚いたの! それで、インドネシアには高品質なカカオが豊富にあるのに、なぜインドネシアでおいしいチョコレートをつくらないのかって考え方が変わったの」。
 ティサさんは猛勉強を始める。スイスで講義を受け、実技も習い、工場を見学した。現在、バリ島タナバン、東ジャワ州のグレンモル、アチェ州のピディ・ジャヤ、フローレス島のタナゾゾの4カ所のカカオ農家から直接カカオ豆を仕入れている。フェアトレードで市場価格の40〜50%は農家の収入になる。
■チョコへのこだわり
 「ピピルティン」という名前は、メキシコに滅ぼされたアステカ王国で貴族を意味する言葉。アステカでは王や貴族だけのぜいたくな飲み物としてカカオが普及していたという。こだわりのチョコレートは、カカオ豆の焙煎から始まる。
 ティサさんは「コーヒーと違ってチョコレートの作り方はとても複雑で繊細」と話す。焙煎温度の少しの違いで味に大きな差が出るという。
 またインドネシアでは安い植物油脂や大量の砂糖、フレーバーなどを混ぜて作られることがほとんどだが、ピピルティンではカカオバター100%。「チョコレートの命ともいえる『口どけ』は、カカオバターでしか再現できない」。
 板チョコ(一つ5万5千ルピア)は、カカオの産地別、カカオの割合別、ナッツ類やクランベリー入りなど20種類から選べる。豆の胚乳部分にあたるカカオニブが入ったものもある。
 現在、同工場とセノパティにあったカフェは閉鎖。アイデアあふれるチョコレートメニューが楽しめるカフェは、中央ジャカルタのサリナ店とラッフルズホテル内のみで、今後は生産に力を入れる。
 工場見学ツアーや料理教室なども実施している。「本当のチョコレートの味を知らないインドネシア人がほとんど。まずはチョコレートを食べて知ってもらうことが何より大切」とティサさんは話す。
 インドネシアにしかないカカオの、風味豊かなチョコレートを味わってみては。(毛利春香、写真も)

Pipiltin Cocoa
住所  Jl.Barito II, No.5, Kebayoran Baru,
    Jakarta Selatan
ウェブ www.pipiltincocoa.com/mainsite

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