泥炭火災に泡消火 シャボン玉石けん 環境配慮、植生回復も

 カリマンタン島やスマトラ島で頻発する森林・泥炭火災の消火に向け、無添加石けんを製造するシャボン玉石けん(本社・北九州市)が調査に取り組んでいる。中部カリマンタン州パランカラヤ市で20日、政府関係者らを招き、同社の安全な消火剤で実演を行い、泥炭火災への効果をアピールした。
 実演は国際協力機構(JICA)の「中小企業海外展開支援事業」の案件化調査の一環で、パランカラヤ大学所有の泥炭地研究施設で行われた。中央政府や地元自治体などから計約100人が参加し、関心の高さがうかがえた。
 7メートル四方の泥炭地を人工的に燃やし、「水のみ」「他社の石油系の消火剤」「シャボン玉石けんの植物系の泡消火剤」を散布して効果を比較した。
 シャボン玉石けんが開発した泡消火剤は、消火剤1に対して100の水を混ぜて使う。水溶液で、インドネシアで主流な粉末の消火剤に比べて溶けやすく、より素早い消火が可能。また、水のみの場合と比べて半分の水量で消火できるという。
 地中で燃え広がる泥炭火災は、放水しても完全な消化が難しく、くすぶってしまう。水の場合、表面張力が高く浸透性に欠けるため、1回の消火では鎮火できず、2次消火が必要になる。シャボン玉石けんの消火剤は今回実演した3タイプで唯一、1回の消火で鎮火した。
 主な原料は植物油で、安全性にも絶対の自信を持つ。実演では、シャボン玉石けん研究開発部兼品質保証部の川原貴佳部長が「人が飲んでも大丈夫です」と消火剤を希釈した水を飲んで見せた。
 これまで火災現場では、消火にあたる作業員が消火剤を浴びて、体がかゆくなるトラブルがあった。今回の事業でコンサルタントを担う建設技術研究所都市部の山本大樹副参事は「基本的には石けんと同じ原材料で作られている。体を洗っても問題ない」と太鼓判を押す。散布後も泥炭地に残留物が残らず、植生の回復も容易という。
 日本から輸入した場合の販売価格は1リットルあたり15万ルピア。「原料は基本的にインドネシアで調達可能で、現地生産も視野に入れている」(山本さん)という。
 シャボン玉石けんが目指すのは、工業省から技術認定を受けること。山本さんは「今までは消火剤の効率や安全性の検証が十分にされてこなかった。政府認定を受けることによって、単純な価格競争ではなく、良い製品が適性な価格でインドネシアで販売されることにつながる」と考える。
 シャボン玉石けんは1995年の阪神・淡路大震災を機に泡消火剤の開発に着手した。2011年、南アフリカで開かれた森林火災に関する国際会議に出展した際、インドネシアの参加者から「環境にやさしい消火剤をインドネシアの泥炭火災に使えないか」と提案されたことをきっかけに、同年からインドネシアで調査や研究を始めた。13年からはJICAの草の根事業として実験などを実施。今後も市場調査などを進め、実用化を目指す。(木村綾)

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