5%成長達成可能 租税特赦、通貨安定に寄与 中銀に追加利下げ余地 勝田祐輔・三菱東京UFJ銀支店長

 英国の欧州連合(EU)離脱決定など、世界経済の不安定な動きが続いている。一方、インドネシアでは、タックス・アムネスティ(租税特赦)法案が先月末に国会(DPR)で可決され、今月1日に施行されるなど新たな動きが見られる。こうした中、三菱東京UFJ銀行の勝田祐輔・執行役員ジャカルタ支店長は、じゃかるた新聞のインタビューで、資金還流規模など不確定な要素があるものの、租税特赦は資本収支の改善、ルピアの安定に寄与すると評価した。インドネシア経済は、中央銀行の金融緩和策で緩やかな拡大を続けており5%成長は達成可能と指摘、中銀は年後半にさらに0.25%か0.5%の利下げに踏み切る可能性があると語った。

 勝田支店長は、租税特赦が与える影響について、「海外からの資金還流がどの程度の規模になるかが鍵」とした。
 バンバン・ブロジョヌゴロ財務相が示した税収増の試算165兆ルピアは、当初いわれていた50兆ルピアの3倍以上の規模で、仮に165兆ルピアの税収増が実現できた場合、海外からインドネシアへ還流してくる資金は相当大規模なものとなり、為替需給面でのルピア買いにつながるだけでなく、税収増も含めてインフラ投資を支える資金となる。
 租税特赦による資金還流は一時的なものとも言えるが、「これを財源に成長のボトルネックとなっている道路、港湾などのインフラ投資を加速することを政府も民間も期待している」と見る。
 第1四半期(1〜3月)の成長率が5%を切る水準に低下したが、中央銀行がことしに入り1月、2月、3月、さらに6月と4回にわたり政策金利(BIレート)を下げるなど金融緩和による景気刺激に積極的に動いていることを評価した。
 懸念された税収不足による政府インフラ投資の執行遅れなどの影響を相殺し、インドネシア経済は、15年第1四半期の4.7%成長を底に、ことしは年5.0%成長(政府見通しは5.2%)に向け、「緩やかな拡大を続ける」との年初の見方を据え置いた。
 さらにインフレ率が中銀のインフレ目標のレンジ(4%プラスマイナス1%)に収まっていることから中銀は年後半にさらに0.25%から0.5%のもう一段の利下げに踏み切る余地があると指摘した。
 需要別では、成長を下支えすると期待されていた公共投資はもたつき気味で、個人消費は底堅いとはいえ、成長を大きく引っ張るだけの力強さに欠ける。民間設備投資はまだら模様で、海外からの直接投資(FDI)は増えているものの、資源セクターへの投資が鈍っていると指摘した。
■1万3000〜1万3600
 一方、昨年20%近く減少した自動車販売台数は、ことしも1月、2月、3月と月次で前年を下回ったが、4月、5月は前年比でプラスに転じるなど「下げ止まりの動きがみられるのは明るい材料」とした。
 為替については、年初は、米国が立て続けに金利の引き上げに動くとみられていたが、▽米経済の足取りが必ずしも強くない▽英国のEU離脱決定などの大きな変化があり、米国の利上げが遠のき、ルピアの一方的なドルへの下落は避けられたとし、為替は「当面1ドル1万3千〜1万3600ルピアで推移する」と予想した。
■製品の一部輸出を
 他方、円が対ドルで上昇いるため、ルピアは円に対し大きく下落しているのに留意が必要とした。部品・原材料を日本からの輸入に頼っている日系企業にとり為替リスクへの対応が引き続き経営課題の一つであることに変わりなく、為替変動の影響を軽減するためにも、「製品の一部輸出」を提案した。
 輸出競争力を持つ製造業の強化は、現政権の政策にも合致し、資源に依存してきたインドネシア経済の体質強化につながると強調した。(西川幸男、写真も)

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