「共に祈り、共に食べる」 下町の露店に集う ラマダン初日 ブカ・プアサ

 ラマダン(断食月)初日の6日、全国各地で約2億人のムスリムが自己修練のための断食に入った。日中は閑散とした屋台通りやカーテンを下ろした飲食店が目立ったが、夕方になるとブカ・プアサ(1日の断食明け)の食事を売る露店が立ち並び、家族連れやいつもより早く帰宅する会社員などの客でにぎわった。

 ラマダン中のムスリムの朝は早い。午前3時ごろ、早朝の食事「サフール」で始まり、その後日没を迎えるまで飲食や喫煙ができない。
 中学生のアフマッド・ザイヌル・イロキーさん(13)は「食べられないし飲めないのは大変だけど、きつい初日を乗り切れば、耐えられると思う」としっかりとした口調で話す。一方、ゴジェック運転手の男性(40)は「あちこちを走って疲れたから、実はナシチャンプルを食べてしまった。断食は明日からにするよ」と声をひそめた。
 中央ジャカルタのプラザ・インドネシア裏手の下町、クボンカチャン通り。普段は午前7時ごろから約30の露店が軒を連ね、朝食や昼食を取るモールの従業員や近くの会社員らで活気づくが、ラマダンを迎えたこの日の昼間は静まり返っていた。「少しでも稼ぎたいから」と唯一店を開けていたテンペゴレン屋のマフウル(33)さんが「昼はお客が少ないけれど、夕方はにぎやかになるよ」と教えてくれた。
 その言葉通り、午後3時前になると次々と机が運ばれてきて、約20店からなるブカ・プアサ用の食べ物の特設販売所ができた。いつもはブブール・アヤム(鶏肉入りおかゆ)を売るカキリマ商人のアグス・プラウィロさん(43)も「ラマダン中、ブブールは休み」と妻や7歳の息子と共に出店。緑豆の煮物200食、ロントン(ちまき)100食、テンペゴレン50食など全約10種類を用意し、約2時間半で売り切った。
 モール内のヘアサロンで働くエディ・パンブティさん(21)は同僚20人分のコラック(ココナツミルクのお汁粉)を購入。「午前3時にサフールを食べたきり。夜まで仕事だから、これから皆でブカ・プアサだよ」と笑顔を見せた。
 午後5時半ごろから、クボンカチャンのバイトゥル・フダ・モスクには続々と人が集まった。午後5時47分、マグリブ(日没)を知らせるアザーンが鳴り響くと、約200人が一斉に牛乳やジュースなどの甘い飲み物とクルマ(干しナツメヤシ)を口にし、喉の渇きと空腹を癒やした。お祈りを挟み、白飯や芋、鶏肉が入った食事が配られた。
 西ジャワ州ブカシから2時間かけてタムリン通りのオフィスに通う会社員、リアントさん(35)も「家で家族と一緒にブカ・プアサができないのは残念だが、ここに来れば皆で食べられる」と頬張った。モスクを管理するカルト・スウィルヨさん(51)は「ラマダンは友情や連帯を深めるもの。これから1カ月間毎日、ここに皆が集まり、共に祈り、共に食べる。君も一緒に食べないか」とブカ・プアサの食事を差し出した。(木村綾、写真も)

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