闇から聞こえる声 北ジャカルタ区パサールイカン 相次ぐ支援団体
ジャカルタ特別州の再開発計画で、漁師町から観光地に生まれ変わる北ジャカルタ区プンジャリンガン郡パサールイカン地区。今月11日の強制撤去から約2週間がたった。故郷に帰る人、公営住宅(ルマススン)へ移転する人がいるなか、一部の住民はまだ、がれきの上で生活を送っている。
住宅撤去後の更地で毎晩、暗がりから話し声が聞こえてくる。声の主は自宅を撤去され、行き場を失くした住民たちだ。アラムリさん(60)は14歳のとき、南スラウェシ州マカッサル市から移り住んだ。撤去後、護岸沿いに積まれたがれきの上に小屋を建て暮らす。妻と子は故郷におり、単身で漁師をしている。
早朝から小舟で海に出て魚を捕り、市場で販売する日々。多い時には1カ月600万ルピアの稼ぎがある。アラムリさんは「3千万ルピアほど貯めて故郷へ戻り再出発を考えている。州政府指定の公営住宅はここから遠く、毎日ここに通うことができない。政府からの補償金があれば、早く家族にも会えるのに」と話した。
撤去から5日後の16日から、イスラム団体のイスラム擁護戦線(FPI)が、居残る住民にビスケットや飲み物などを配り、その後、山岳団体らがテントや発電機を設置するなど、支援が相次いでいる。
政府は今後、更地にした地区を緑地公園にし、新たな観光地として整備する。ルアール・バタン・モスク周辺に残る住宅も、5月には強制撤去する予定だ。住民のムザイニ・アブドゥラさん(41)は「土地の再開発計画に、住民たちがまたここで暮らせるような施設、そして働くことのできる環境整備も盛り込んでほしい。住民たちは州政府からの詳しい情報を待ち望んでいる」と訴えた。(山本康行、写真も)