復刻版寄贈を 日本軍政資料ボロボロ 国立図書館が求む

 インドネシア日本軍政期(1942〜45年)の広報誌などを保存している国立図書館(中央ジャカルタ)の資料の傷みがひどく、手に取ることすら難しい状態になっている。修理には高額な費用がかかるため、日本で復刻出版されている資料の寄贈を国立図書館は求めている。
 国立図書館雜誌部の司書を18年務めるアティカさん(44)によると、同部にはオランダ統治時代からの雜誌約1万4千点を収蔵。オランダ時代の資料は紙質がよく、傷みは少ないが、日本軍政期は戦時だったためか、紙質が悪く、手に取ると周囲がボロボロ取れてしまい、「コピーを取るたびに、資料が小さくなる」(アティカさん)という。
 大戦中、ジャワで日本軍政当局陸軍第16軍が発行していた「治(オサム)官報」(日本語)と「KANPO」(インドネシア語)は、それぞれ日本人とインドネシア人に向けた広報誌で、数少ない残存資料。国立図書館にはそのごく一部しかなく、それも傷みのために貸し出すことができない状態になっている。「治官報」と「KANPO」は現在、米国やオランダに残る資料などを集めて復刻版(全8巻、15万円)が日本の龍溪書舎から出版されている。アティカさんは「『KANPO』はインドネシアでもよく使われる資料なので、そろえたい」と話す。図書購入予算は大半は新著に充てられ、古い雜誌は購入できないのが実情という。
 また、占領下のジャワでインドネシア語と日本語で編集された唯一の総合グラビア誌「ジャワ・バル」は1ページごとに和紙で補修された状態で保存されているが、欠けたページも多く、図書館としては「KANPO」同様、日本で出された復刻版を入手し、利用者に役立てたい、とアティカさんは話している。
 国立図書館をよく利用し、オランダ統治時代以来のイスラム団体の研究をしている早大博士課程の土佐林慶太さん(34)は「国立図書館なのに復刻版もなく、原資料がボロボロになっているのを見てショックを受けた。日本で復刻されている軍政期の資料は他にも多くあり、インドネシアの研究者のためにもそろえてほしい」と話している。(田嶌徳弘、写真も)

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