コタ駅前ビルで95センチ 地盤沈下 旧市街再開発で調査
ジャカルタで地盤沈下が拡大している。再開発が進むオランダ植民地時代の旧市街、西ジャカルタ・コタトゥア地区のビルでは95センチが沈下したことがわかった。専門家は2050年までにジャカルタが水没する恐れがあると予測し、早急な対策を呼びかけている。
オランダ植民地時代の歴史的建物が並ぶ西ジャカルタ・コタトゥア地区。コタ駅南口の向かいにあるオルフェビルの改修段階で、ビル1階部分で1921年の建設当時から95センチもの深刻な地盤沈下が起きていたことがわかった。平均で年間1センチ沈下していたことになる。
同ビルの完工式典を兼ねた地盤沈下・海面上昇対策セミナーで17日、再開発を手がけるコンソーシアム(企業連合)ジャカルタ旧市街活性化(JOTRC)のリン・チェ・ウェイ社長は「オルフェビルの改修段階で興味深い発見があった」と発表した。
同ビルは1921年に建てられ、オランダ植民地時代に保険会社事務所として使われてきた。8カ月間の改修期間中、同社のプロジェクトマネジメントチームや建築コンサルタントらが地盤沈下の実態を調査した。
セミナーに出席した、公共事業・国民住宅省の専門家でインドネシア大学教授(水文学)のフィルダウス・アリ氏はジャカルタは34年以内に沈むとの予測を発表した。フィルダウス教授は今後年間16センチのペースで地盤沈下が進行すると想定し、2050年にはジャカルタ全体が海面よりも陸地が低い「海抜ゼロメートル地帯」となると予測。現在、年間26〜32センチのペースで地盤沈下が起きている地域もあるという。
フィルダウス教授はジャカルタの地盤沈下の原因として人口の過密化や建物の乱開発、地下水の過剰使用などを挙げ、1200万人の人口が年間2億1千万立方メートルの地下水を使用している状況を指摘。「ジャカルタの沈下を止めるには、地下水のくみ上げをやめるべき」と主張した。
セミナーに出席したスシ・プジアストゥティ海洋水産相は「ジャカルタは集水区域だが、(建物の建設が相次ぐなど)発展するにつれ、運河や貯水池が閉ざされ集水されなくなった」と環境への配慮を訴えた。
政府は埋め立て地の造成や防波堤整備などの対策を掲げている。オランダと協力し、高さ24メートルの巨大防波堤と17の人工島を建設する首都統合沿岸開発(NCICD)が2013年から進められている。(木村綾)