「また見たい」皆既日食 パレンバン・アンペラ橋

 皆既日食の9日、南スマトラ州パレンバン市内は曇り空で、時折、小雨が降って蒸し暑い。モールやホテルの屋上、モスクや屋根に上る住民もいたが、多くの観光客らがムシ川に架かるアンペラ橋へ向かった。身動きが取れないほどの人で埋めつくされ、空気も薄い。少しでも高い所に登り、夢中で空を見上げると、ドローン(無人小型機)が飛び交っていた。 

 厚い雲に覆われた太陽が少し顔をのぞかせる度に歓声が上がり、日食グラスをのぞくと月で欠けた太陽が見えた。8割ほど欠けていても、目が疲れてしまうほどまぶしい。曇り空を裸眼で見上げる人がほとんどで、慌ててサングラスやネガフィルム、黒い下敷きを目に当てて太陽を見上げていたが、すぐに雲で隠れてしまう。
 皆既日食が起こったのは午前7時22分ごろ。急激に辺りが暗くなり始め、橋の上は一気にざわめいた。橋の上では電灯、川の上では船に明かりがともされた。頭上高くに上げられたスマートフォンや写真のフラッシュの明かりが、きらきらと輝く。気温も急激に下がり、空気もひんやりとしていた。
 皆既は1分52秒ほどだったが太陽は雲に覆われ、最後に半分にも満たないほどのダイヤモンドリングが一瞬、見えた。「もう終わったの?」という声があちこちから上がり、あっという間に普段と変わらない朝に戻った。
 パレンバン在住のアレックスさん(34)は初めての皆既日食に感動したという。「こんなにパレンバンに人が来るのは初めてで、僕もとても楽しみにしていた。急に暗くなるのに驚いたが、いつも太陽がいかに熱くて、まぶしいのかがわかった」と話した。
 インド出身でジャカルタで働くシンさん(46)は1999年にインドのニューデリーで皆既日食を見たことがあり、もう一度見たいとパレンバンを訪れた。「ブリトゥン島よりアンペラ橋のほうがよく見えると聞いて来たが、曇りで見えず残念だった。ダイヤモンドリングは本当に美しいのに」と悔しがった。
 アンペラ橋では車とオートバイの通行が禁止されたため、タクシー運転手のフィクトルさん(33)は橋の近くに車を止め、車の上に上って観察した。「ほんの数分であっという間だった。雲で太陽が見えなかったが、急に薄暗くなり始め不思議な雰囲気だった」と満足げに話した。一方、「途中で女性が怖いと言ってタクシーの中に乗り込もうとしてきた。皆既日食が何か知っていても、怖いと感じる人もいる」と話した。
 海外から足を運んだ観光客も多く、北海道から訪れた田中邦明さん(60)も初めて同地を訪れた。「ほんの少ししか見えず残念。一生に一度は見たいので、また次の皆既日食を観測したい」と話した。(毛利春香、写真も)

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