建設地に地震リスク 運輸相は慎重姿勢 高速鉄道計画調査不足の声

 中国とインドネシアの国営企業連合が起工したジャカルタ〜バンドン間の高速鉄道の建設計画について、気象庁(BMKG)などは地震の災害リスクを懸念している。2019年開業を目指し事業を主導するリニ・スマルノ国営企業相に対し、ジョナン運輸相は27日、調査には最善を尽くすと許認可発行に慎重な姿勢を示した。

 気象庁は日刊紙コンパスに、高速鉄道の建設地域付近に地震が起こる可能性がある断層などが、4カ所あると説明した。西ジャワ州スバン県からクニンガン県にわたり断層があり、1842年と75年、1912年、90年に地震が発生。そのうちマジャレンカ県で発生した地震はマグニチュード(M)5.8を記録し、同県で多くの建物が倒壊している。
 西ジャワ州バンドン市の北10キロの位置にある活断層はM6.3レベルの地震を引き起こす可能性があると指摘。さらにインド洋の海底にあるプレート(岩盤)では、将来的にM8.5以上の巨大地震を起こす可能性があるという。
 火山地質災害対策局(PVMBG)も高速鉄道の建設区域の一部は地盤が弱いと指摘。気象庁、火山地質災害対策局ともに今回の高速鉄道計画に関してリスク調査を求められていないという。
複数の許認可未取得
 運輸省鉄道総局のヘルマント・ドウィアトモコ総局長は26日、事業を主導する高速鉄道インドネシア・中国(KCIC)社の作成した書類が中国語だったため、英語に翻訳してから提出するよう、書類をいったん返却したと述べ、建設の許認可をまだ出していないと語った。
 運輸省の政令によると、必要な許認可は11種類。25日時点でまだ複数の許認可が未取得という。プラモノ・アヌン内閣官房長官は起工式が開かれた前日の20日時点で、環境林業省による環境影響評価(アムダル)が最後の許認可と説明していた。
 起工式にはジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領含め関係閣僚が出席したがジョナン運輸相は欠席、事業を主導するリニ・スマルノ国営企業相との確執が取り沙汰された。ジョナン運輸相は27日、高速鉄道について「私は事業の手続きを進めるだけで、事業の適性や収益性などはリニ氏に聞いてほしい」と強調した。
 同相によると、契約期間を50年に設定し、50年経過後にKCIC社から政府へ事業を引き渡す。「建設計画の調査は最善を尽くす。途中で工事が中断した場合、政府は責任を持たない」と話した。
 国会第5委員会(運輸・インフラ担当)の議員からは「(高速鉄道計画について)本来主導するのは運輸省。なぜ国営企業省が前にでているのか」と疑問視する声が上がっている。(佐藤拓也、写真も)

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