パトロンと連立与党 板挟みの大統領 本名教授 ジョコウィ政権の1年 三菱東京UFJ講演会

 三菱東京UFJ銀行ジャカルタ支店は17日、中央ジャカルタのホテルで経済講演会を開いた。立命館大学の本名純教授がジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)政権発足1年と今後の展望について、同支店の西仲崇行副支店長がことしの経済動向と来年の見通しについてそれぞれ講演し、500人以上が聴講した。
 本名教授は、発足1年を迎えたジョコウィ政権をパトロンの支配と拡大する連立与党の談合との間の「綱渡りの政治」と表現。二つの勢力のバランスを取ることにほんろうされて力強いリーダーシップを発揮できないでいると分析した。
 世論調査の結果などから、現政権への不満が高止まりしていると現状を説明。政権発足時の国民の期待値が高かった分、失望も大きかったとみる。政治の落ち込みの原因の一つに構造的問題を挙げた。政治的しがらみのない「庶民派」リーダーとして選ばれ、ユドヨノ時代の既得権益に縛られて改革できずにいた「決められない10年」を打開してほしいとの期待が寄せられたが、政権が発足するとたちまち国会対策で壁にぶつかった。
 そこで力を借りたのが闘争民主党のメガワティ党首、ユスフ・カラ副大統領、ナスデム党のスルヤ・パロ党首の「パトロン」3人だ。閣僚選びでも3人の息のかかった人事となった結果、代償として大統領の自立性が弱まり「操り人形」になってしまったと指摘する。
 今後、手足を縛られた大統領がいかに自立するかがポイントとなる。8月の内閣改造ではカラ副大統領と深い対立関係にあるリザル・ラムリ氏を入閣させるなど、徐々に自立の兆しがみられる。また、グリンドラ党のプラボウォ氏との電撃会談や民主党大会でのスピーチなど「自ら野党に接近することで、パトロンの影響力を中和しようという動き」が目立つ。
 パトロンから自立し、野党へ接近する動きはコストを伴う。野党から与党への「くら替え」が増えることで、政権発足時は少数派だった与党は拡大傾向にあり、野党113議席に対し与党256議席。前政権の「決められない10年」の再来も懸念される。
 二つの政治的圧力の板挟みが政治不信を招いている大統領だが「再浮上はまだまだ可能だ」と指摘。大統領府に新設された「シチュエーションルーム」を挙げ、「国民の声を組織化して政治に生かせるようになれば、ジャカルタ特別州知事時代の市民との直接対話を全国規模で実現できる」と期待した。
  ■ルピア安つづく
 西仲副支店長は、ことしのルピア相場を「8月以降下落が加速したが10月に一気に調整された」と話し、来年もルピアは下がりやすい状況が続くとの見方を示した。
 8〜9月のルピア安の原因として、企業の対外債務に対するヘッジの義務化と国内でのルピア使用の義務化を挙げ、ルピアの売りを促進し、逆効果を与えかねない政策だったと指摘。一方で、来年は米国の利上げという不透明要因がなくなりドル高に終止符が打たれるとみており、ルピアの対ドルレートは1万4千台で安定すると予想する。
 10月以降、中銀政策の方向転換や米国の利上げ観測後退を背景にルピアは上昇している。中銀にとっては金融緩和の絶好のタイミングだが、17日に発表された中銀の金融政策では9カ月連続の政策金利据え置きとなった。預金準備率が引き下げられたことは「株式が買われ経済刺激の役に立つ。(中銀は)産業界や政界が強調してきた景気への刺激を意識し、周囲との対話を始めた」と評価した。(木村綾、写真も)

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