漁船爆破 1年で100隻超 スシ海洋水産相  強硬策に批判も

 スシ・プジアストゥティ海洋水産相主導の違法漁船の爆破数が10月末時点で100隻を超えた。スシ氏は就任直後から外国建造船の営業許可の一時停止や、底引き網などトロール漁を禁止する大臣令を次々と打ち出した。閣内で支持率トップの人気閣僚だが、強硬策に批判もあり、今後の去就にも注目が集まっている。

 海上で爆破した漁船の内訳はフィリピンが34隻で最も多く、次いでベトナムが33隻、タイ21隻、マレーシア6隻、インドネシア4隻、パプアニューギニア2隻、中国1隻。スシ海洋水産相は昨年の就任以降、独立記念日や民族覚醒の日などに合わせ全国各地で違法漁船を爆破してきた。
 政府は10月19日に違法漁船撲滅のための特別チームを組む大統領令(2015年第115号)を発令、さらに取り締まりを強化する。
 陸軍や海軍、国家警察、海洋水産省などが連携して取り組む枠組みとなる。海洋水産省が主導で2日、初回の会議を開いた。
 スシ氏は外国船の違法漁船が横行している海5カ所を特定。具体的にマラッカ海峡、南シナ海、北スラウェシ・カリマンタン島間の海、アラフラ海、ジャワ島南沖のインド洋と説明した。
 スシ氏は「特に南シナ海では、違法な操業が多く1週間で3〜5隻摘発できるほど。中国やベトナム、タイからの漁船が多い」と議論を仕切った。

■国内流通量が増加
 海洋水産省は、ことしの国内市場への漁獲量が前年に比べ240%増加したことや、国内漁業者が主に使用する10〜30トン級の小規模漁船の漁獲量が増えた資料を公開。現政策の国内漁業への貢献度合いの高さを強調した。
 スシ海洋水産相の目玉政策の一つ、積載量30トン以上の外国船営業許可の一時停止(モラトリアム)措置は10月末で終了する方針だ。漁船の営業許可は1年ごとの更新制となっているため、約1年間継続した同令により、外国船全1132隻の操業が事実上停止されている。
 調査チーム(アネフ)が対象となる外国船を違法かどうか判断し、営業許可の更新を下す仕組みだが、スシ海洋水産相は2日、「モラトリアムは10月末で終わったが、外国船の多くは違法に漁をしている」などと発言し、外国船の操業に否定的な姿勢を示した。日系漁業関係者も「会社で保有する全11隻の営業許可はまだ下りていない。連絡待ちの状態」と困惑している。
 歯に衣着せぬ発言でも有名なスシ氏は一部から批判も多い。大統領令に基づく特別チーム編成の過程でも、陸軍幹部から批判がでたほか、「漁船の爆破は非効率的でイメージ戦略に過ぎない」(インドネシア海洋研究所、ユリアン・エクゼクティブ・ディレクター)と難色を示す声も多い。
 スシ氏は10月30日に開かれた同相就任1年を記念した会議で「私がいなくても、周囲の幹部は皆優秀だ」とあいさつ。今後1〜2カ月以内に辞任の可能性を示唆したが、理由について詳細を語らなかった。
 民間調査機関インド・バロメーターの満足度調査で、スシ氏が現閣僚内で首位を取るなど市民からの信頼は厚い。(佐藤拓也)

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