ガス生産「陸か海か」 海事相・エネ鉱相が対立

 国際石油開発帝石(INPEX)主導で開発を進めている東南アジア最大級のガス田・アラフラ海マセラ鉱区の開発方針をめぐり、エネルギー鉱物資源省と海事調整省が対立している。これまでインドネシア政府承認の下、天然ガス生産の全てを海上で行なう「フローティング」方式で開発調査をしてきたが、リザル・ラムリ海事調整相が一転して「陸上に施設を建設すべきだ」と反対意見を表明したためだ。

 フローティング方式は海上で天然ガスの精製から積み出しまでを可能とする最新方式で、世界でもまだ実用化が進んでいない手法。
 INPEXは2000年にマセラ鉱区でガス田を発見。10年にインドネシア政府からフローティング方式での開発承認を取得した。ことし9月には、同鉱区で天然ガス埋蔵量の増大を確認し、従来の年産250万トンから750万トン規模まで増産した改定開発計画を提出した。750万トンは日本の年間輸入量のおよそ8%に上る巨大ガス田だ。
 8月に新入閣したリザル海事相はこのフローティング方式に反対。陸上建設よりも費用がかかるほか、海上では雇用が生まれないと指摘。ガス田から約600キロ離れたマルク州アルー諸島に生産拠点を置くことを提案した。「アルー諸島に建設すれば、島民の雇用が生まれ、地方の活性化につながる」。陸に建設し、ガスを運ぶパイプライン設置事業を地元企業に受注させたい思惑もみられる。
 以前からフローティング方式を支持しているスディルマン・エネルギー鉱物資源相は、フローティングの方が費用はかからないと主張する。
 地元メディアによると、エネルギー鉱物資源省の試算では海上での建設費は約148億ドルなのに対し、陸上は約190億ドル。一方で、リザル海事相の試算する海上建設費は約193億ドルで、陸上は約150億ドルと、エネルギー鉱物資源省の見積もりと反対の金額となっている。
 スディルマン・エネルギー相は「開発の遅延は避けるべき」と述べ、独立したコンサルタント機関の関与を要請。年内に結論を出したい考えだ。
 INPEX本社広報は「マセラ鉱区の位置を踏まえれば、フローティングLNGの方が土地代やパイプライン費用がかからず、費用負担は少ないほか、環境への負荷を抑えられる」と見込む。
 リザル海事相は以前にも、政府の電力開発目標3万5千メガワットに異議を唱えたほか、外資企業の米フリーポートに対する規制や権益割合が外資寄りだと主張し、スディルマン・エネルギー相と何度も異なる見解を表明している。(佐藤拓也)

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