死刑執行 予定通り 外国人ら9人 回避要求つっぱね

 オーストラリアやフィリピンなど外国人8人を含む薬物犯9人の死刑について、プラセティヨ検事総長は28日、「予定通り執行する」と述べた。国際社会から相次ぐ死刑回避要求をはねつけ、28日深夜か29日未明に執行される公算が大きい。

 外国人8人のうち、ヘロインを密輸したとして死刑判決を受けた豪州人2人は、再審請求手続きに問題があったとして申し立てた違憲審査が受理され、来月12日に弁論期日が決まったばかりだった。しかし、プラセティヨ氏は28日、「再審手続きに関する違憲審査で、外国人に法的地位はない」として、予定通り執行する考えを示した。
 ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領は27日のアキノ比大統領との会談で、同情の意を示し、検事総長と協議する考えを伝えていたが、死刑回避には至らなかったもようだ。プラセティヨ氏は28日、「死刑囚の出身国政府が接触してきているが、主権には影響を及ばさない」と強調。フィリピン人死刑囚が請求した2度目の再審請求は27日午後に棄却された。
 最高検は72時間前に刑執行を通告する慣例に基づき、25日午後には各死刑囚に予定を伝えていた。早ければ28日夜に執行される計算になる。中部ジャワ州チラチャップ沖のヌサカンバンガン島に収容されていた死刑囚9人は、死刑の直前に入る独居房へ移った。最後の面会が同日昼過ぎまで許され、訪れた関係者の中には、泣きじゃくり、倒れ込む家族もいた。
 豪州とフィリピン人以外の死刑囚の内訳は、ナイジェリア人が3人、ガーナ人とブラジル人、インドネシア人が各1人。国際社会からは死刑回避を求める声が相次ぐ。
 国連の潘基文事務総長は25日の声明で「薬物関連犯罪は(死刑を適用するほど)最も深刻な犯罪とはみなされていない」と指摘した。死刑廃止を求める国際人権NGO(非政府組織)アムネスティ・インターナショナルは27日付で、ジョコウィ大統領に書簡を送付。「犯罪への処罰と抑止を必要とする立場は理解するが、死刑の犯罪抑止力が他の刑罰より高い証拠はない」として、寛大な措置をとるよう求めた。
 豪州では、「アボット首相よ、我らの息子を救え」と題した動画がインターネット上に投稿され、俳優ジェフリー・ラッシュさんらがインドネシア政府への働きかけを訴えている。香港のインドネシア領事館前ではフィリピン人やインドネシア人出稼ぎ労働者が抗議活動を展開した。
 豪州人2人については裁判の過程で、判事が賄賂を要求した疑いが浮上。ビショップ豪外相は疑惑についての捜査が完了するまでの間、刑執行を延期するよう要請している。
 ユドヨノ前大統領は豪州・パースの西オーストラリア大学で来月1日に開かれるフォーラムへの出席を予定していたが、「敏感な時期だ」として、訪問を見送ることを決めた。(道下健弘)

12人発砲、実弾は3発 姿勢は本人の判断 死刑の執行方法

 国際的に大きな注目が集まっているインドネシアの死刑。監獄島ヌサカンバンガン島の刑場では、どのように刑が執行されるのか。
 アムネスティ・インターナショナルによると、刑の執行を担うのは、死刑囚1人につき12人の警察官。5〜10メートルの距離から死刑囚に向けて、小銃を一斉に発砲する。12丁の小銃中、3丁だけに実弾が込められ、どの執行官の発砲が致命傷になったのか分からないようにしている。
 受刑者は執行の際の姿勢を、立ったままか、座るか選択でき、目隠しの有無も本人が決める。執行前には教え諭したり、心を落ち着かせたりするため、教誨(きょうかい)師との面会も許される。
 人権団体コントラスなどのまとめによると2005年以降、インドネシアで刑が執行された死刑囚は27人で、うち外国人は9人。単純計算すると、年平均は全体で2.7人、外国人は0.9人の計算だが、09〜12年と、14年の執行はなかった。

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