早くも価格転嫁の動き 燃料値上げで混乱 バス運賃に野菜も…

 ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領自ら発表した補助金付き燃料値上げから数時間後の18日午前0時、全国で値上げが実施された。3割以上となる大きな上げ幅に加え、発表から実施までの時間が短かったこともあり、各地で混乱が拡大。乗り合いバスなど公共交通機関では運賃値上げやストライキを促す動きが広がっている。
 燃料値上げ発表に真っ先に反応したのは自動車やオートバイの一般利用者だった。発表直後の17日深夜、全国のガソリンスタンドには値上げ前の燃料を買いだめしようとする市民が殺到した。南スラウェシ州マカッサルでは、日付が変わるまでに給油できなかった人が暴れたり、若者が廃タイヤに火を燃やして値上げに抗議したりする場面もあった。
 公共交通機関の運行管理業者が加入する陸上運輸組合(オルガンダ)は18日、値上げに抗議する全国ストを19日から実施、運行を停止すると発表。「公共交通機関は経済的に弱い立場の人々が使用している」として、特別措置を講じるよう要求している。
 運賃値上げに動いた地域もある。西ジャワ州ボゴール市は乗り合いバスに千ルピアの値上げを許可。18日から近距離は3500ルピア、遠距離は5千ルピアの新運賃とした。東ジャワ州マランの公共交通機関も千ルピア値上げ。オルガンダ・ジャカルタ支部も30〜35%の運賃値上げを州に申請する方針だ。
 一方、ジョナン運輸相は同日、「全ての当時者が値上げに向き合わなければならない」と強調。値上げは認めざるを得ないが、幅は最大で10%までとし、大幅値上げをけん制した。

■「便乗」値上げも
 運輸以外でも「便乗」ともとれる値上げが始まっている。西ジャカルタ区のジュンバタンリマ市場では18日、赤トウガラシやインゲンなど一部の野菜の価格が上がった。同市場でトウガラシを売るドニーさん(22)の店では、1キロ5万から5万5千ルピアに引き上げた。ドニーさんは「西ジャワ州タシックマラヤから車で搬送されるため、燃料値上げの影響は避けられない」と話す。
 ジョコウィ政権は燃料補助金削減の意義をインフラ整備や教育、健康保険などにより多くの予算を振り分けるためと説明し、今月初めには医療保険の「保健カード(KIS)」と、低所得家庭に教育費を給付する「教育カード(KIP)」の配布を始めた。ただ制度は走り出したばかりで、国民の間ではまだ実感に乏しい。燃料値上げで生活がひっ迫するとの懸念が根強くある。
 中央ジャカルタ区クボンシリ通りで麺類を屋台で販売する女性(34)は「影響が広がると千ルピアずつ販売価格を上げなければならないかもしれない」と気をもむ。オジェック運転手の男性(38)は今後、運賃を3割上げようと思っている。燃料の値上げ分をそのまま転嫁する格好だが、「生活用品全体が値上がりし、生活は苦しくなる。節約が大変だ」と嘆息した。
 労働組合総連合(KSPI)のサイド・イクバル代表は18日に発表した声明で、全国で低所得者層を中心に8600万人のオートバイ利用者が補助金燃料を購入していると指摘。「資本家に物価をつり上げる口実を与える燃料値上げは富裕層の利益にしかならない」と政府を批判した。全国でほぼまとまった来年の最低賃金についても、新規燃料価格を反映して再設定すべきだと主張し、150の都市で最低賃金再設定を求めるデモを組織すると揺さぶりをかけた。(山本康行、堀之内健史、レベッカ・アドリアナ)

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