巨大防潮堤に疑問符 人工島、空港建設案も浮上 オランダ・韓国も参画

 ジャカルタ北岸の巨大防潮堤(ジャイアント・シーウォール)と人工島計画が進んでいる。オランダと韓国が参画をもくろみ、アホック副知事は韓国を視察した。だが全長50キロの防潮堤、5千ヘクタールの埋め立てと壮大な計画を実現するための資金繰りのめどは立っていない。           
 ジャカルタは地盤沈下のため、2050年に大半の地域が水没するとの観測があり、居住区域がなくなることも危惧される。この対処策として防潮堤と人工島が議論されてきた。ジャカルタ特別州はファウジ前知事の下「ジャカルタ沿岸域防災戦略(JCDS)」を策定。インドネシア政府とオランダが13年からJCDSの発展として「首都統合沿岸開発(NCICD)」に着手した。開発の草案は高さ15メートルの防潮堤を東のブカシから西のタンゲランまで50キロにわたり伸ばす事業を2015年に起工し、22年に竣工すると目標に据えた。
 今年4月、オランダのメラニー・インフラ環境相が1400ページにわたる計画草案を提出。オランダは今月23日から州職員26人を、治水と国際港で知られるロッテルダムへの視察に招待した。
 草案に含まれた「グレートガルーダ」が物議を醸している。国鳥ガルーダを模した人工島を造り、ジャカルタの交通網を統合するビジネス地区が新しく生まれるとうたう。建築事務所は総工費247億ドル(約2兆7千億円)と見積もる。

▼貯水池で汚染
 一方、韓国は同国南西部のセマングム防潮堤の経験で食い込みを図った。チョ・テヨン駐イ韓国大使は17日、知事に昇格する見込みのアホック副知事と会談し「セマングムは全長33・9キロメートル。ジャカルタの防潮堤計画とほぼ同じ」と売り込んだ。
 セマングム事業は3兆4756億ウォン(約3600億円)を費やし、東京都の約5分の1にあたる4万ヘクタールを干拓し7割を農地、残りを貯水池にする事業。だが、事業開始当初から環境団体などの非政府組織(NGO)が干潟の生態系の破壊などを理由として反発、訴訟を繰り返した経緯がある。アホック副知事は18〜21日に韓国を訪問し防潮堤を視察。帰国した22日「(セマングムは)防潮堤で造った貯水池が、環境汚染という問題を抱えている」と話した。

▼アリ・サディキン空港
 埋め立て地に国際空港を建設する計画も浮上。アホック副知事は埋め立て地に建設した関西国際空港を参考にした「アリ・サディキン空港」を構想する。
 人工島には8企業が参画に意欲を示している。人工島と防潮堤だけで州政府は総工費280兆ルピア(2兆5千億円)と見積もる。
 多くの計画と思惑が入り乱れている状況。だが、2014年補正予算のうちインフラ開発に配分されたのはわずか206兆ルピアで、計画の総工費すら下回る。複数年予算を計上しても、官民連携を利用しても、資金繰りは難航しそうだ。(吉田拓史)

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