自動車販売タイ抜き1位へ アセアン盟主に返り咲きも インドネシア、123万台に
インドネシアが今年、自動車販売数で、東南アジア最大市場のタイを抜く勢いを見せている。国内トップシェアのトヨタ・モーター・マニュファクチャリング・インドネシアの野波雅裕社長が明らかにした。米系大手調査会社もインドネシアでの販売台数は昨年比6.5%増の123万台とみており、タイは118万台にとどまると予想している。
世界銀行が5月に発表したGDPの国際比較プログラム(ICP)では、インドネシアは世界経済大国トップ10にランク入り。今回、自動車市場でもタイを追い抜く堅実な成長が示されたことで、経済面でもアセアン盟主として返り咲くことが期待される。
国内最大手のトヨタの販売台数は2009年から順調に伸び、13年には43万台を突破した。業界全体をみても、5月の新車販売台数は前年同月比2.6%減の9万7147台だったものの、1〜5月の累計は53万1805台で、6.8%の伸び(インドネシア自動車工業会調べ)となった。14年累計で123万台に達するペースが続いている。
インドネシアでは年末にかけて、数種の低価格・低燃費自動車(LCGC)が導入される見通しで、低燃費車の販売台数が一層拡大することが予想される。今年1〜4月のLCGCの販売台数は5万1千台で、東南アジアの低燃費車市場の18%を占めた。
米系調査会社フロスト&サリバンによると、今後の3年間でLCGCの東南アジア市場は20%増の拡大が見込まれるという。インドネシアが政府のバックアップを受け、低燃費車市場の主導権を握るとみており、ベトナムやインドなど新興国に向けた生産拠点になる可能性もあるという。すでにフィリピンやパキスタンにLCGCを輸出している。
ヒダヤット工業相は各社に輸出量を増やすように促しており、「輸出に対し助成金を提供するかどうかは熟考中」と述べている。
タイでは、政府が自動車購入を促すため、2012年に補助金導入を公表した後、車の販売台数が急増。しかし、今年は継続中の政治危機が影響し、昨年最高となった133万台から11.7%減の118万台にとどまると予想されている。
野波社長は今後のインドネシアの自動車産業に関し、「タイの販売台数落ち込みが来年も続くとは限らない。1位の座を維持するためには、政府によるインフラ整備の推進などが不可欠だ」と話している。
東南アジア全体の自動車販売数については、マレーシアなどがタイでの落ち込みを相殺し、13年並みの350万台に達するとの予測もある。(新谷敏章)