【ジャカルタ・フォーカス】胸が苦しい、排気ガスの街 深刻度増す大気汚染 (2014年05月31日)

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 首都の大気汚染が深刻だ。当局の計測は許容範囲としているが、人々の体感とはどうも外れている。
 27日午後5時、中央ジャカルタ・タナアバンのクボンジャティ通りは渋滞していた。バス、アンコット(乗り合いバス)、乗用車が道路に詰まり、クニンガン方面、コタ方面、タムリン方面のいずれも動かない。路上は車両の排気ガスが立ちこめる。特にバス、トラック、アンコットの排ガスは真っ黒だ。目が痛み、胸に圧迫感を感じる。客待ちで一日中街頭に立つオジェック運転手のアウィンさん(53)は「本当に嫌になるね」と吐き捨てた。通勤ラッシュ時になると人々がマスクを付けるのは見慣れた光景だ。
 環境管理庁(BPLHD)ジャカルタ支部のルスマン・サガラ環境保護マネージメント部長は大気汚染の原因について、地元メディアに「主要因は車両だ。次の要因になる産業は、郊外に分散している」とし、「メーカーは製品の排出削減を進めるが、普及の速度の方が勝っている」と述べた。

■アセアン最悪の硫黄分
 警視庁登録の車両数は急な伸びを続けてきた。2013年末に1604万台に達した。内訳はオートバイ1192万台、乗用車300万台などだ。
 燃料消費量も毎年10%のペースで急増する中、燃料の質を良くすることは長年の課題だ。環境省のカリアンシャ汚染抑止担当審議官によると、補助金付き軽油「ソラー」の硫黄分は3500PPM(PPMは100万分の1を表す単位、濃度の表示に使う)で、日本の90年代初期の水準。日・韓・シンガポールの軽油の硫黄分10PPM、タイ50PPMからかけ離れており、「東南アジア諸国連合(ASEAN)で一番汚い燃料を使っている」という。
 せめて硫黄分が200PPMにとどまる非補助金軽油「DEX」への転換が不可欠だが、これでも十分ではない。
 燃料消費のうちプレミウム、ソラーなどの補助金燃料が96〜97%を占め、補助金は付かないが、精製度の高い「プルタマックス」などは3〜3.5%に過ぎない。補助金燃料は財政も圧迫しており、政治的決断で消費削減に向かう必要がある。

■子の成長も、影響広範囲
 このまま放置すれば2030年にはPM10、硫黄酸化物などが7倍に増えるとの試算がある。住民の健康への影響が心配だ。
 2012年の国連環境計画(UNEP)の調査によれば、ジャカルタでは大気汚染がもたらす疾患の費用が年間38.5兆ルピアに達している。大気の不純物のなかには、呼吸器官だけでなく、子どもの認知能力や成長に影響するものもある。
 だが、2013年8月のBPLHDの観測によると、主要な五つの大気汚染物質で基準値を超えたのはオゾン(O3)だけ。PM10、硫黄化合物は基準値以下らしい。
 ジャカルタ特別州の州知事として、ジョコウィ氏は緑地化、公共交通機関への転換を進めた。ユドヨノ政権は環境負荷の低い代替燃料への転換したり、乗用車に無線機器を付け燃料消費を抑制したりすることを掲げたが、やり遂げられなかった。(吉田拓史)

白い煙の中に浮かんだ西ジャカルタのタマンアングレック(中央)=2013年5月、オフィスビル「ムナラタムリン」より撮影
白い煙の中に浮かんだ西ジャカルタのタマンアングレック(中央)=2013年5月、オフィスビル「ムナラタムリン」より撮影

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