パームヤシ殻で発電 炭化させバイオマス燃料に ワールドワン、省電舎

 日本でインドネシアのパームヤシ殻(PKS)を発電燃料に使用するため、再生可能エネルギー事業を手がける省電舎(東京)とワールドワン(群馬)の現地法人は、リアウ州ドゥマイにPKS炭化工場を建設する。PKSは炭化すると発熱量が上昇し、発電に利用しやすくなる。石炭と比べ二酸化炭素(CO2)排出量も少なくバイオマス燃料として日本企業が注目している。
 工場の投資額は2億〜5億円。年内に月産1万トンの生産体制を構築する計画だ。国営農園(PTPN)と提携しPKSの安定供給を図る。主に日本国内のバイオマス発電所や石炭火力発電所が取引先となるという。
 パーム油抽出後、PKSはこれまで多くが廃棄されてきた。石炭の約7割の発熱量がありバイオ発電に利用されている。炭化前のPKS発熱量は1キロ当たり約4千キロカロリーだが、乾燥や低酸素状態での加熱工程などを経て約6千キロカロリーに上がるという。
 省電舎の中村俊社長はPKSは石炭との「混焼」も可能で需要が高まるとし、「PKSは新たなバイオ燃料として潜在性が大きく、(石炭火力発電所にある)微粉炭発電設備にも使用可能だ」と強調した。
 PKSの日本国内利用は広がっている。化学品メーカーのトクヤマは自家発電燃料としてPKSに注目。2010年に石炭との混焼実証実験を開始し、12年から発電に利用している。
 PKSの利用拡大で石炭使用量を削減する。石炭価格は高騰しており燃料調達価格の安定化を目指す。トクヤマの担当者は「PKSは発電燃料に適する。今後は使用量を増やす」とした。
 CO2削減に向け、宇部興産は昨年7月、ランプン州に炭化実証実験設備を導入。年1万トンのPKSを炭化し日本への輸出も検討している。今年1月にはインドネシアで年10万トン規模のPKS炭化施設の建設に向けた調査を開始した。
 日本政府が12年7月に導入した再生可能エネルギー(風力、太陽光など5発電)の固定価格買取制度も拍車を掛けた。
 発電した電気を電力会社が固定価格で買い取ってくれるため、再生可能エネ発電事業に参入し売電事業に取り組む企業が増加した。資源エネルギー庁によると、PKS発電の買い取り価格は1KW当たり24円。
 JFEエンジニアリングはインドネシアのPKSなどを利用したバイオマス発電所(49MW級)を神奈川県川崎市に建設し、15年12月の稼働開始を目指す。同社によると、買取制度導入で国内各地のバイオマス発電所建設の需要が高まっているという。
■PLNも関心
 国営電力(PLN)はPKSのバイオマス発電所建設に関心を示す。再生可能エネ発電の発電量を21年をメドに1万3千MWに増やし、発電全体に占める割合を12年比8%増の20%へ拡大させる計画を設定する。
 しかし、PKSの供給体制構築や投資誘致が困難として、PLNの担当者は「政府がPKS輸出規制を実施し国内供給に回すのであれば可能だろう」と指摘している。
 インドネシア・パーム油事業者連盟(GAPKI)は12年PKS生産量を600万トンと試算している。(小塩航大)

【キーワード】 パームヤシ殻(PKS)収穫されたパームヤシのパーム油(CPO)を採取し、不純物を除去した種殻がPKS。GAPKIによるとインドネシアのパーム油生産量は世界第一位(12年、2300万トン)で、マーガリンや石けんの原料になっている。12年PKS生産量は約600万トン。水分含有率が低く発熱量が豊富く、バイオマス発電燃料として注目されている。

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