「フードコート」では足りない 瀬戸際の露天商移転 タナアバン市場ブロックG

 中央ジャカルタ・タナアバン露天商移転が暗礁に乗り上げている。ジョコウィ知事は寒風が吹く移転先の伝統市場に「フードコート」を投入し、モデルケースの復活をうかがうが、伝統市場自体が時代の風を受けている。
 「実業家としてサービスの質、会計、マーケティング、偽札を見抜く能力で向上しなくてはいけない」。タナアバンのブロックG。ジョコウィ氏は14日のフードコートの開所式典で、零細個人事業主にげきを飛ばした。貧しい家庭環境から家具輸出業で成功したジョコウィ氏は商店主の「自助努力」を求めてきた。
 州営市場「ブロックG」は昨年8月の露天商立ち退き以降、一部の露天商を3、4階に収用した。モデルケースを成功させようと、買い物客にコメ2キロを配ったり、毎週末入口前でバンド演奏を開くほか、ジョコウィ氏が直接訪れて宣伝を繰り返してきた。だが、どうにもこうにも繁盛しなかった。
 打開策のフードコートはシンガポールの「ホーカーズ(屋台街)」政策をなぞるようだ。「元カキリマ(移動式屋台)引き」を集め、ソト、サテ、パダン料理など各地の食事を楽しめるようにする。問題だった「子ヤギ」とやゆされた1×1.5メートルの極小テナントを改装し、1030平方メートルに388席を確保、103人の簡易飲食業者が入居する。東南アジア随一とも言われる衣料品市場で働く従業員を、客に想定しており、国鉄駅も近く、繁盛する余地はありそうだ。
 この改装費12億ルピア(約千万円)を中銀、州営銀ら4銀行が供与。ジョコウィ州政はこの民間からの物品、資金供与を「CSR」という枠組みとして活用。州予算には重複項目が1万8千件もあり、架空の給与計上、調達での汚職などで、膨大なロスがあるとみられることが背景だ。ジョコウィ知事はこの枠組みを団地建設、貧困カンプン再生事業、調整池浚渫用ショベルカーのリース費などで生かしてきた。
 だが、このフードコートの見通しも明るくない。「客足はまだまだ多くないね」とフードコート開設の3日後の16日、サテ・パダンを売るグスナさん(35)は話した。「知事が来た日は無料クーポンが配られて繁盛したが、それ以降はまだまだ空いているのが現状だ」。西スマトラ州パダン出身のグスナさんは10年間、タナアバンでカキリマを引いたが、10年前にスティヨソ知事(当時)が大規模な強制立ち退きを行いブロックGに移転。周囲が再び路上に降りていくのにもかかわらず、ブロックGに留まってきた。「入居料は今後6カ月間無料のためそれまでは耐えきれる」
 だが、背後で伝統市場の衰退が忍び寄る。州内153カ所の伝統市場の4割で施設の使用が難しく、築20年を超えても改装されていない建物が多い。しかも、スーパーマーケットに対して競争力が低いままだ。2012年で二輪車保有台数が4人に1台の水準を超えており、より保有率の高いジャカルタでは二輪車を使い、遠くても安いスーパーマーケットを利用しやすい。
 これに対して、州政府は伝統市場を下層階を商店テナント、上階をマンションにする高層ビルに建て替える構想を進めている。もともとの入居者、露天商、川沿い占拠住民を収用できる。だが、露天商らから非公式の場所代をとっているとされ、「職員の規律が低い」とやゆされる公社自体の改革も必要になりそうだ。(吉田拓史、写真も)

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