【スラバヤ動物園の真相】(下) 強引な敷地売却話で対立 各国注視、再建を応援

 スラバヤ動物園では経営者の交代が相次ぎ4つの派閥がある。その中でもっとも大きく影響力があるのは1981年から経営に参画する国軍出身のスタニー・スバキル氏の派閥だ。
 争いが最初に表面化したのは97年。園の経営者だった地元名士のモハマッド・サイド園長が病気がちになると理事だったスタニー氏が臨時園長に就任し、まもなく動物園の敷地の売却話が浮上した。サイド氏は土地を市に無料譲渡し、スタニー氏を追放して売却を防いだが、この時から徐々に動物の管理や飼育環境は悪化していったという。その後も園長の交代が続き、2003年〜09年の間、再びスタニー氏が園長に就任。市に実質的に経営権がわたった現在でもスタニー氏やその側近は建物部分の所有を主張している。
 スタニー氏が経営権を主張するのはスラバヤ動物園が繁華街の一等地にあるからだ。動物園の敷地面積15ヘクタールは東京ドームの3個分以上。13年5月時点でのスラバヤ動物園の資産評価額は1600億ルピア、そのうち土地が1530億ルピアを占める。これまでにスタニー氏とその周辺から土地の一部を売却し、ホテルやレストランを建設する話も浮上した。スタニー氏の園長時代は不明瞭な会計も多いとの指摘がある。

■動物売却の疑惑も
 経営者の争いが動物に悪影響を与えているとの内外の指摘が相次ぎ、10年2月に林業省の運営チームが乗り込んで、その後は土地売却話もおさまったが、今度は動物の不正売買が浮上した。
 スラバヤ市のトリ・リスマハリニ市長は1月20日、汚職撲滅委員会(KPK)に動物が車や金銭と違法に取引されたとの調査報告書を提出した。動物園は一時は4千匹ほどいて、折に触れて園外の動物園に譲渡、もしくは交換してきたが、報告書は10年に林業省の特別チーム結成後にも売買の違法取引があったという。地元メディアでは「再び経営陣が対立」などの見出しが踊った。

■再建予算が足りず
 問題が山積みの動物園経営だが、市に運営が移管した昨年から園内の雰囲気は改善している。正確な記録がある06年から初めて死んだ動物が生まれた動物を下回った。飼育環境を改善するために、小屋の修理や動物が運動できる器具や樹木も一部増やした。
 しかし、問題は派閥と予算だ。市の計画では飼育小屋や水族館の改善のために計1300億ルピアが必要だが、14年に市から割り当てられる全予算は100億ルピアにすぎない。ラトナ園長は派閥に左右されない運営を進めているが「派閥はどうすれば解決できるのかはわからない」と頭を抱える。
 多数の動物の死は人間に対する無言の抗議でもあった。10日にはロバート・ブレイク駐インドネシア米国大使が支援を表明するなど、各国の動物愛護団体や動物園関係者から支援の申し出が相次いでいる。
 ラトナ園長は職員教育を強化し、再び「スラバヤのシンボル」にしたいと決意を語った。(高橋佳久、写真も)=おわり

社会 の最新記事

関連記事

本日の紙面

JJC

人気連載

天皇皇后両陛下インドネシアご訪問NEW

ぶらり  インドネシアNEW

有料版PDFNEW

「探訪」

トップ インタビュー

モナスにそよぐ風

今日は心の日曜日

インドネシア人記者の目

HALO-HALOフィリピン

別刷り特集

忘れ得ぬ人々

スナン・スナン

お知らせ

JJC理事会

修郎先生の事件簿

これで納得税務相談

不思議インドネシア

おすすめ観光情報

為替経済Weekly