太陽光機本社が倒産 未払い給与の補償めど立たず 従業員未通知でバタム撤退

 リアウ諸島州バタム島トゥナス工業団地内でコイルを生産し、6月下旬に従業員732人へ事前通知せず突然撤退したサン・クリエイション・インドネシア(SCI)の親会社、太陽光機(本社・長崎県大村市)が6日、長崎地方裁判所に民事再生法の適用を申し立て、受理されていたことが分かった。SCIの撤退との関連性は明らかになっていない。SCIの従業員は8月、バタム市議会などで未払い分給与の支払いを求める抗議活動を展開。退職金など補償のめどは立っていない。
 太陽光機は電機メーカーや自動車メーカーなどを中心にスマートフォンに使用される受電コイルや車載メーターコイルを生産してきたが、電子業界の世界的な低迷や海外工場の赤字増加などで経営が悪化。年商は1992年3月期に216億6251万円だったのが、2013年3月期には33億5300万円まで落ち込んでいた。負債額は19億9300万円。
 従業員の給与などが未払いとなっている事態を収拾しようと、今月初旬にはバタム・インドネシア・フリーゾーン地域管理庁(BPFZA)の担当者らが来日し、同社の木下直哉社長と面会。撤退理由や従業員の補償問題などについて話し合った。関係者によると、木下社長はコイル需要の落ち込み、バタム地域の最低賃金の上昇などで経営環境が悪化したことを撤退理由として説明。従業員の補償問題に関して、赤字が続くSCIの財務状況の監査を受けた上で、最終的に支払い能力の有無を判断する必要があるとした。
 BPFZAの木下一顧問によると、SCIの銀行口座の予算残高が約20億ルピアあり、そのほかにも工場内に残っている一部の機械や備品などの売却金が補償に充てられる可能性があるという。
 しかし、機械の多くは撤退前に工場から搬出されている上、SCIのルディ・ハルトノ・ゼネラルマネジャーは従業員に対して合計約250億ルピアの支払い義務が生じるとしており、従業員への補償が完全に実施されるかは難しい状況だ。

■バタム島、撤退増加
 自由貿易地域(FTZ)に指定されているバタム島は、輸出加工型企業が大半のため、インドネシアの内需拡大の恩恵を受けていないところが大半。世界経済の停滞による需要減に加え、賃金上昇圧力も高まっており、近年、撤退する企業も増えている。
 同島バタミンド工業団地内に入居するハードディスク駆動装置(HDD)に使用するレアアース(希土類)磁石を生産する信越化学工業(本社・東京都千代田区)の現法「シンエツ マグネティクス インドネシア」は先月23日、工場の生産活動を停止。撤退に向けた手続きを開始した。本社の広報担当者はじゃかるた新聞に対し「顧客の工場が他のASEAN(東南アジア諸国連合)地域やそれ以外の地域に移転し、バタム工場への需要が年々減少してきたため、撤退を決定した。法的な手続きに基づいて従業員への補償はきちんと実施する」と話した。
 今年のバタム市の最低賃金は204万ルピア。この5年で100万ルピア上昇した。バタムでデモを展開する金属労連(FSPMI)は来年の最賃について、330万ルピアに引き上げるよう要求している。
 同島には日系企業65社が進出し、国別投資でシンガポール、マレーシアに次ぐ規模を有するが、投資家からは最賃の急上昇による経営環境悪化を懸念する声が上がっている。BPFZAの報道官は「他国と比べて最賃が高くなれば、企業撤退を促し、競争力が低下する要因になる」と話した。(小塩航大)

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