「大統領に直訴する」 マドゥラ島のシーア派難民 自転車で850キロ

 東ジャワ州マドゥラ島サンパン県ナンケルナン村で昨年起きたイスラム・シーア派信者殺害事件で難民化しているシーア派信者のうち10人が16日、同州スラバヤから自転車で850キロの道のりを経てジャカルタに到着した。ユドヨノ大統領との面会、実家のある村での安全な生活の保障を求める文書を手渡すことを要求している。
 ユドヨノ大統領は昨年8月に殺害事件が起きた際、国軍司令官や国家警察長官、宗教相を現場へ派遣し、早急に解決すると明言したが、県のスポーツ施設で避難生活を送る住民約160人の帰還問題は放置されてきた。
 2月に再選したサンパン県のファナン・ハジブ知事は「衝突を防ぐため」との理由でシーア派信者のマドゥラ島からの移転許可を州政府に求めた。スカルウォ州知事は慎重に対処する姿勢を示している。
 県政府から避難民に支給されていた水と食料は5月1日で停止。その後、支援は同20日に州政府から1人75万ルピアが支払われたのみという。
 一行はユドヨノ大統領との面会が実現するまでジャカルタに滞在し、各団体や政府機関に状況を訴えていく。
 ユドヨノ大統領は先月、世界平和や相互理解の促進に貢献したとしてアピール・オブ・コンシャス財団(本部・ニューヨーク)から賞を受けたが、マドゥラ島のシーア派問題など宗教少数派への暴力を放置してきたとして、受賞への反対運動が起きた。

■「治安を排斥の口実にしている」
 「いつまで避難所にいればいいのか。早く故郷に戻りたい」シーア派信者の1人、ブジャディンさん(40)が心境を語る。妻と4人の子ども全員が避難所であるサンパン体育館に身を寄せている。
 人権団体コントラス、法律擁護協会財団(YLBH)など避難民を支援する団体はある。だが仕事も耕す畑もなくジャカルタまでの交通費もない。友人、親戚から借金をして食いつなぐ。子どもはまともな教育を受けられない。病院に行けず、不衛生な体育館で出産した女性もいる。その現状を知ってもらうため、あえて自転車でやってきた。
 ブジャディンさんは「妻は何度も避難前に住んでいたバルク・ウラン村に行ったが、危険なことは何も無かった」と話す。県政府は事件を少数派を追い出す口実にしていると懐疑的だ。
 一行の代表、ムハンマド・ロシッドさんは17日に開いた記者会見で「村はわれわれの故郷。故郷で最期を迎えたい。われわれはサンパン市民であり、インドネシア市民。移転は問題解決でなく新たな火種を生むだけだ」と移転拒否を強く訴えた。(堀之内健史)

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