下級警察官、蓄財150億円 燃料、木材を違法取引か 西パプア

 資金洗浄捜査機関の金融取引報告分析センター(PPATK)は15日、西パプア州ラジャ・アンパット県警の下級警察官が1兆5千億ルピア(約150億円)の預金残高を持っていることを明らかにした。木材、燃料の違法取引に関与したとして、パプア警察は16日、森林法、石油ガス法違反の疑いで容疑者に断定。捜査当局は、警察官ら公務員の副業や不正蓄財への監視を強化している。
 調べによると、巨額の預金保有が発覚したのはラボラ・シトルス容疑者。下級警察官だが、2007〜12年、地元企業を介して木材や燃料の違法取引に関与、約60社と取引があったとみられる。地元の会社の理事も務め、カラオケ店を経営していた疑い。
 パプア警察は16日、ラジャ・アンパットでラボラ容疑者が所有する燃料運搬用の小型船を押収し、船員5人を逮捕した。さらに東ジャワ州スラバヤで押収された軽油100万リットルとコンテナ15台分の材木は、同容疑者のビジネスと関係があるとみて捜査している。
 ラボラ容疑者の月給は800万ルピア(約8万円)。1兆5千億ルピアの預金残高は副業で得たとみられる。インドネシアの法律は警察官の副業を禁じているが、ラボラ容疑者は15日地元テレビ局に対し「燃料も木材も家族の事業だ。私はいまもラジャアンパットの警察官だ」と釈明。「預金額は1.5兆ルピアというのは正しくなく、40億、50億ルピアぐらいだ」と語った。
 ラジャ・アンパット県は西パプア北部の森林が広がり、世界有数のサンゴ礁や魚類の生息地を抱え、ダイビングスポットで有名な海がある風光明媚な地域。観光創造経済省は観光開発地域に指定している。
 PPATKは調査資料を汚職撲滅委員会(KPK)に送付した。国家警察の報道官はパプア2州を統括するパプア警察の捜査を支援すると語り、KPKではなく、警察が捜査主体との考えを示した。
 パプア警察は3月から同容疑者の違法取引の内偵を進めてきたと説明。捜査の成果として、警察は小型船3隻に積まれた燃料千トン、コンテナ80台分の木材をすでに押収したと捜査の進展を強調している。
 非政府組織(NGO)の警察監視団(IPW)のネタ・パネ委員は「警察官が法律で禁じられている副業をしていることは人々の常識だ。一人で1兆ルピアをもうけているとは考えづらく、ほかの警察官も捜査しなくてはいけない」と語り、警察官の捜査は警察ではなく、KPKが進めるべきだと訴えた。
 運転教習機材調達汚職事件で公判中のジョコ・スシロ元国家警察交通局長(公判中)が、1千億ルピア相当の資産を保有していたこともKPKの捜査で先月わかっており、警察組織の腐敗究明が進みつつある。(吉田拓史)

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