「インドネシアの奇跡」続く 愛知県豊橋市が水道技術支援

 愛知県豊橋市が、西スマトラ州ソロック市で行ってきた水道技術支援事業がことしで6年目を迎えた。当初は冷ややかだった現地職員も、地道な活動で現在は好意的な反応に変わった。水質の飛躍的な改善をもたらした取り組みは、現地水道関係者の間で「インドネシアの奇跡」と呼ばれている。8月20日には佐原光一市長と市上下水道局の職員ら5人が現地を訪問、今後の支援内容について合意した。
 ソロック市は、スマトラ島の西スマトラ州都パダン市から東へ約65キロの山間部にある人口約6万4千人の都市。首都ジャカルタから飛行機と車を乗り継いで2時間以上かかる。
飲める水道水を
 支援は、2012年に北スマトラ州メダン市の水道局長らが豊橋市を訪れ、技術支援を要請したことがきっかけ。翌年にはソロック市長からも同様の要請を受けた。メダン、ソロック両市の願いは共に「飲める水道水を作りたい」というものだった。
 現地視察したところ、両市にはともに立派な浄水場があり、一見して設備面の不足はなかった。しかし、水道水は明らかに濁っており、日本の水質基準をはるかに上回る鉄やマンガンのほか、同基準では認められない大腸菌まで検出された。
 豊橋市は13~14年度、自治体国際化協会(CLAIR)の事業として両市への技術支援を開始。現地職員の研修を受け入れる一方、現地に派遣した職員が、浄水の基礎技術、設備の運転方法、原水の状況に応じた薬剤の使い方などを指導した。その結果、「飲める一歩手前」の無色透明な水を作れるところまでこぎ着けた。
 15~17年度には、国際協力機構(JICA)の事業として対象をソロック市に絞って実施。職員を延べ11回派遣し、安定稼働しない設備の交換、ろ過・滅菌処理工程の運転管理技術の指導など、「飲める水」実現に向け急ピッチで水質改善を進めた。
笑う水道職員
 17年度の派遣期間が終わる18年2月。豊橋市職員が浄水場の集合場所でいつものように出されたお茶をすすると、現地の水道職員がクスクスと笑い始めた。聞けば、この日のお茶は初めて水道水で入れたものだという。日本の水質基準もクリアし、水道水が飲めるようになった瞬間だった。
 インドネシアでは、水道水は主に飲用以外に使うものとされ、飲用水はボトル詰めされた市販品を購入することが多い。現地の水道職員も同じ認識で、定められた基準以上の仕事をするつもりもなく、支援開始当初は「『何をしに来た?』という反応」(河合寿浄水課主査)だった。「信頼関係を築いて文化・仕事面の意識の溝を埋めるまでが、最も時間がかかった」(朝河和則前浄水課長)という。
 ところが、14年度に無色透明な水を作ることができてから、現地職員の意識がガラッと変わった。「市販の水を買わないで済む」「市民の健康のため力になれる」と、目的意識と責任感が芽生え、自主的に水質改善に取り組むようになった。豊橋市にとっても、改めて技術力に自信を持つことができ、若手職員の育成の面でも得られたものは大きかった。今後、日本の水道関連企業のシェア拡大につながることにも期待しているという。
既成概念を覆す
 かつて北九州市がカンボジアで行った水道技術支援は、「プノンペンの奇跡」と呼ばれた。それに比べると豊橋市の支援は、規模こそ小さいが、現地水道関係者の間で「インドネシアの奇跡」と呼ばれているという。今回の佐原市長らのソロック市訪問で、19~21年度にはモデル地域内で各戸への安定的な配水と、住民への水道水PRの支援を行うことが決まった。今後の支援活動で「水道水は飲めない」という現地の既成概念を覆すことができるか。豊橋市の挑戦は続く。(記事・写真は時事)

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