ジンベエザメ密漁摘発 マルク州で海洋水産省 中国輸出用に飼育か

 海洋水産省は世界最大の魚類であるジンベエザメの保護を強化している。インドネシアではジンベエザメを含む9種のサメの捕獲や輸出が規制されているが、フカヒレなどの密輸が横行。マルク州では中国への輸出目的で飼育していた企業を摘発した。政府は乱獲を取り締まる一方で、絶滅危惧種のジンベイザメを観光資源として活用していきたい考えだ。
 スシ・プジアストゥティ海洋水産相は27日、マルク州西セラム県のカスンバ島で、ジンベエザメを飼育し輸出しようとしていたとして、漁業法やジンベエザメ保護に関する大臣令違反の疑いで中国系企業を摘発したと明らかにした。
 飼育していたのはアイル・ビル・マルク社で、体長4メートルのジンベエザメ2匹をいけすで飼育し、中国に生きたまま輸出する計画だった。
 また、マルク州政府や自然資源保全センター(BKSDA)が観賞魚の保護に違反するとして過去に勧告を出した書類も見つかった。同社はシンガポール在住の中国人と会社経営者の2人が所有し、ジャカルタ出身者と計3人が運営していたことがわかった。
 いけすではジンベエザメの餌付けなどを担当する数人が働いていた。関係者の1人によると、ジンベエザメ2匹は漁師がことし2月に、カスンバ島から西に約16キロ離れた海で巻き網で捕獲し、その後3カ月ほど飼育していた。
 スシ海洋水産相は「インドネシア国内の監視体制がぜい弱なため、外国の水族館などへ売りつける密輸業者が暗躍している」と指摘し、自然保護団体などと協力して監視を強化していくと強調した。保護した2匹は死なせないよう細心の注意を払い、海にかえすという。
■最大の天敵は人間
 ジンベエザメは高級食材のフカヒレや肉、肝油などに使うため乱獲されてきた。特にジンベエザメのフカヒレは、大きく繊維質が太いことから最高級の食材とされている。さらに海の汚染など環境の変化が、個体数の減少に影響を与えている。ジンベエザメは成長が遅く、個体数の回復にも時間がかかる。
 国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは野生での絶滅のおそれが高い危急種に記載されている。2002年にはワシントン条約で輸出が規制された。インドネシアでは13年に海洋大臣令が発令され、捕獲や輸出は禁止されている。
 海洋種保全局(KKJI)や自然保護団体らが協力し監視に力を入れている。今回も野生動物保護協会(WCS)などの自然保護団体が22日に海洋資源・漁業管理局(PSDKP)へ報告したことで発覚した。
 専門家のほかにも各地の住民や漁師らにも協力を求め、ジンベエザメが現れた日時や場所、頻度などを記録・報告してもらっている。またジンベエザメを捕らえた写真を元に模様で個体を識別したり、魚体につける衛生タグなども活用している。
 ジンベエザメはインドネシア国内の15カ所以上の海に分布し、各地で異なる呼び名を5種類以上持つ。ジンベエザメを見られる観光地として、パプア州のトゥルック・チェンドラワシ国立公園(TNTC)や、東ジャワ州プロボリンゴ県ブンタル海岸などがある。
 一方、ゴロンタロ州ボネ・ボランゴ県ボトゥバラニ村では、ジンベエザメが観光客を乗せた船に衝突したり、観光客が触ることで傷ついたりする被害があり、客引きのための餌付けなどが問題となっている。
 ジンベエザメ 斑点模様が特徴の世界最大の魚類で体長は10メートルを超す。18〜30度の亜熱帯や熱帯周辺の海に生息し、大きな口で海中のプランクトンやオキアミ、海藻、小魚などを食べる。約30年で8メートルほどになり成熟。その後60〜70年、最長で100年まで生きるものもいる。穏やかで人を襲うことはないとされており、ダイバーらから人気の高い魚の一つ。(毛利春香)

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