シナブン山は、北スマトラ州の観光地として知られるトバ湖の北三十キロにそびえる富士山そっくりの美しい火山。
頂上の噴火口の形が馬蹄形で、山頂は富士山より広く見える。
ジャカルタのメトロテレビが現地から伝えた映像によると、爆発の規模は前日より大きく、もくもくと上昇する黒煙は二筋に分かれ、晴れ上がった空に向かって勢いよく伸びた。
シナブン山から東南に約十キロ離れたところにカロ県の村が点在しており、住民約一万二千人が隣村の公共施設に避難し、炊き出しの支援を受けている。
半径約十キロ付近まで火山灰が広がり、村人の中にはぜんそくの症状や気分が悪くなる人が多く、北スマトラ州はテントや食料、マスクを配布している。
■最も危険「アワス」継続
火山地質災害対策局は二十九日に発令した四段階の警戒レベルで最高の「アワス」(避難開始)を三十日も維持している。「アワス」は、主噴火の前触れである水蒸気や火山灰を含む噴火が始まった状態で、一定の期間を置いて主噴火が予想される状況。
シナブン山は、火山噴火でできたカルデラ湖であるトバ湖の北に位置する活火山。インドネシアでは、西暦一六〇〇年以降に噴火している火山をタイプA、噴火していない火山をタイプBとおおざっぱに分けており、シナブン山はBとされ、地震計も配置されず、火山の専門家からも「ノーマーク」だった。
オランダ領時代の一九一二年に小規模な噴火の兆候があり、水蒸気や硫化水素などのガスが噴出した記録があるが、最後の大噴火は約四百年前とされる。
同じ活火山の富士山の最後の噴火は宝永大噴火の一七〇七年。シナブン山は富士山より、長く活発な活動をしていなかったが、今回、四世紀ぶりに大噴火したことになる。
一九七〇年代から日イ両政府はトバ湖の水を利用した発電所を建設。一九八二年からアルミ精錬のアサハン・プロジェクトを稼働している。
井口正人・京都大火山活動研究センター准教授の話 インドネシアには数多くの火山があるためすべての火山を監視するのは困難。シナブン山は長い間、噴火していなかったため、火山地質災害対策局は火山性地震の計測器を設置していなかった。過去数百年の間、噴火していなくても、突然噴火の予兆が現れることがある。インドネシアと同じ火山国の日本では、約一万年以内に噴火したことのある火山は活火山に指定し、人々に対する警戒を緩めない。
今回の噴火の規模は決して大きくないが、一九九一年に約六百年ぶりに噴火したフィリピンのピナツボ火山のように長い間噴火していなかった火山が噴火すると、大きな規模になることがある。火山活動は一カ月以上かけて、徐々に活発になることもあるので、引き続き警戒する必要がある。
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もくもくと黒煙が上がるシナブン山。噴煙を吸い込み、健康被害を訴える住民が多い=アンタラ通信
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