海賊、密輸、密漁などが多発する東南アジア諸国の海上保安活動強化支援に乗り出した日本の海上保安庁は二十二、二十三の両日、巡視船「やしま」(約五千三百トン、乗員五十人)を、ジャカルタ沖約五十キロのジャワ海に派遣し、インドネシア海運総局、海上警察、海軍兵士計十二人とともに、初の日イ合同の乗船研修を行った。「やしま」が誇る装備の紹介と海賊を想定した机上訓練に続く海賊捕捉訓練では、搭載ヘリ「MH931」を飛ばした。実戦さながらの緊迫としたやり取りを展開する海上保安官の姿を追った。
 | ジャカルタ沖で海賊捕捉訓練を行う「やしま」
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 | どくろマークを付けて逃走する海賊船に見立てた小型ボート
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「海賊船を捜査捕捉せよ」。海賊船に見立てた小型ボートが、はるか洋上に猛スピードで逃走するのが見えた。
ベル212型「MH931」に搭乗していた記者のヘッドホンに、「やしま」のオペレーション室から日本語の無線指令の声が届いた。「やしま」の上空を旋回していたヘリは、機体を整え、数キロ先の海上を疾走する海賊船を目がけて一直線に飛び出した。無線交信や操縦など、後藤均機長らオレンジ色の制服の海上保安官があわただしく活動を開始する。
二十二日午後二時から行われた海賊捕捉訓練は「蛮刀で武装した五人組の海賊が、南シナ海の公海で日本船籍の貨物船A号を襲撃。金品を強奪し、日本人船員二人を人質に取って高速ボートで逃走した」との情報が「やしま」にもたらされたことから始まった。
海賊を演じるのは、インドネシア海上警察の女性警部補、海軍西部艦隊の大尉と日本の海上保安官三人。海賊追跡の国際基準の法令執行の手順を見てもらおうと、海上保安庁がインドネシアで初めて行った単独訓練だ。
「海賊船は白色、長さ七メートル。人質を取ったまま、北方へ逃走した」
「やしま」からは無線で続々と情報が入る。まもなく小型ボートを発見したヘリが「該船と見られる船舶発見」の報を伝えた。
海賊船に追い付いたヘリは、海面すれすれを低空飛行し、機体を大きく振りながらサイレンを鳴らしてジグザグ走行を続けるボートを威嚇。「やしま」も発光信号や汽笛で停船命令を発し、艦橋に小銃班を配置すると、ボートは白旗を上げて降伏した。
「最新の設備で海賊を追い詰め、勇気ある操縦で、ヘリが上空から風圧で海賊船を動かなくする作戦など、海上保安庁の技術力、プロ根性に感心した」と、犯人役でボートに乗り込んだ海軍西部艦隊のアルフレッド・ダニエル・マッテウズ大尉(二九)。
研修ではこのほか、リアウ諸島州ナツナ島沖で海賊が日本タンカーを襲撃したことを想定し、海運総局、海上警察、海軍、やしまが無線で連絡を取りながら合同で捕捉する机上訓練を実施した。
「やしま」は二十四日に海上警察を訪問して意見交換を行った後、二十六日に帰途につく予定。藤原文隆・業務管理官は「法令執行機関としての基本的な部分をシンプルに説明し、インドネシア側の理解を得られた」と語った。
国際海事局(IMB)によると、インドネシア海域で昨年発生した海賊件数は世界全体の三分の一を占める九十三件。
しかし、インドネシアでは海上の法執権権限を有する機関が海上警察、海軍、海運総局、海洋漁業省の四つもあり、装備も貧弱なため、日本政府は海上治安調整機構の設置や、技術・能力開発を支援する意向を示していた。