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2004年9月29日 じゃかるた新聞掲載

自立するスラウェシ島(3)
地方分権の現場から−JICA人材育成
注目浴びる「小さな民」 経済格差解消が課題

 翌日、州都パルから、ムルパティ航空で州北部のトリトリ県に飛んだ。機体の窓からは、急峻な山、複雑な海岸線、手つかずのジャングルが作る荒々しいスラウェシの姿が手に取るように分かる。
 トリトリ県は人口十九万人の中部スラウェシ州内の中規模県。起伏に富んだ地形が複雑な入り江を作り出す風光明媚な場所で、漁業のほか丁字やカカオなどが産業の中心になっている。

■実力は村長並み

 きれいに区画されたトリトリの中心部にある県庁には、国際協力機構(JICA)の中嶋浩介さん(三八)と内務省訓練庁のイマムさん(四二)を迎えるため、県内七つの郡長が集まった。
ドンド族を前に話をする中嶋さん(中央右)
ドンド族を前に話をする中嶋さん(中央右)
 県のナンバー2の官房長をはじめ、行政局長、保健局長らが居並ぶ中、七人の郡長が一人ずつアクションプランの進展状況や成果を発表。それに中嶋さんとイマムさんがアドバイスを送る。会議は三時間以上にも及んだ。
 「郡長と言っても能力はジャワの村長レベル。彼らの育成が重要だということが改めて分かった」と中嶋さんは打ち明ける。

■「山の民」と対話集会 

 トリトリ県には多数派のブギス人のほか、原住民のトリトリ族、ダンバル族、ドンド族がいる。アクションプランでドンド族の社会化活動を行ったガラン郡長、スティルトさん(四四)は対話集会に中嶋さんらを招待した。
 定住地を持たず、山から山へ移動するドンド族は「山の民」と呼ばれ、トリトリ県に百八十五世帯約八百人が住んでいる。そのうちラカタン村に住む百人が村長宅前の空き地で中嶋さんらを歓迎した。
 「華人やブギス人がもともとわれわれが住んでいた土地を買い占めている」「ドンドには『一本の木を切る前に三本の苗木を植えなければらない』という教えがあるが、よそ者がどんどん山の木を伐採してる」
 集会では県の幹部や中嶋さんらを前に、ドンド族の代表が強い調子で民族の窮状を訴えた。
 以前、彼らは人を見るだけで逃げていた。それが、県が舗装道路や小学校の建設などを行ってから、少しずつ他民族との対話や生活向上の意識を持つようになったという。
 イマムさんは集会で「うまく周囲とコミュニケートしなければ、アンボンやポソのようになってしまう」と語り掛けた。

■地方ならではの視点

 中嶋さんは「われわれ外国人を連れてくることで、支配民族のブギス人が『あなたたちのこともちゃんと見てますよ』というメッセージに利用している面も否めない。しかし地域の安定や発展のためには少数民族の生活向上は重要。郡長がドンド族の経済格差の解消に焦点を当てたのは評価できる」と指摘する。
 トップダウンの中央政権では見捨てられがちな少数民族も、地方が主役になればとたんに大きな問題になる。人口二万九千人の小さな郡が、八百人の民族問題について真剣に議論し、対話できるところに、中央集権の時代とは違った難しさと可能性が見える。


つづく


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