パル市西部の庶民が住むカンプン。未舗装の路地を深く分け入っていくと、住宅の車庫を改造したような赤タマネギ揚げ(バワンゴレン)の工場に着いた。
経営するのは、一九九六年からバワンゴレン事業をしているパウリナさん(三九)。クーラーのない暗い室内で汗びっしょりになりながら、使い込まれた大鍋でスライスされた赤たまねぎを揚げる。
■セミナーで事業拡大
「西パル郡が行った研修に参加した後、この事業を拡大しました」
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自慢のバワンゴレンを揚げるパウリナさん
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三人の従業員だけで細々と工場をやっていたパウリナさんは二〇〇三年四月、西パル郡の郡長、アジェンクリスさん(三八)がJICAセミナー後に開いた「貧困層の啓発のための研修」に参加。
そのセミナーで、村人が五─二十人の小グループに分かれ、畜産、養鶏、農業、裁縫などの分野で研修を受け、事業の潜在性や発展性について意見を出し合った。
パウリナさんは研修後、これまで細々と続けていたバワンゴレン事業を拡大することを決心し、従業員を新たに四人雇い、また大量注文にも対応できる新型の機械を入れた。「うちのバワンゴレンはおいしいって評判なのよ。店でもすぐ売り切れるの」
揚げたてを一つまみほお張ると、ふわっとした甘く香ばしい味わいが口いっぱいに広がった。
■研修で地域開発学ぶ
パルは、県と同格の市(コタマディア)。東西南北の四郡がある。二〇〇二年十二月、四人の郡長は南スラウェシ州のマカッサルで行われた五日間のJICAセミナーに参加。セミナーでは、講師役の内務省の訓練官や行政大学の教官の下で「リーダシップの構築」「地域開発」「住民トラブルの解決能力」など、さまざまな講義を受講した。
■インフォーマルを重視
市で唯一「海のない」南パル郡の郡長、ヒダヤットさん(四二)は、屋台や商店の多い地域特性を考え、屋台整理をアクションプランに考えた。
道路をはみ出すように占拠していた屋台やカキリマ(移動屋台)には、住民から「交通のじゃまになる」「ゴミを掃除しない」と苦情が出ていた。
「しかしインフォーマルセクターは郡の経済にとって重要。営業禁止にするのではなく、彼らがきちんと営業できる環境を作り出す必要があった」
ヒダヤットさんは、反対する一部の屋台主に粘り強い説得を続け、ようやく四十軒の屋台を指定場所に移動させることに成功。いまでは「警察に追いかけられず安心して商売ができる」と屋台主からも感謝される。
■危機の影響ない分野
インドネシア経済は九七の経済危機で大きな打撃を受けたが、屋台などのインフォーマルセクターは、庶民の日常生活を相手にしていたため、さほど影響を受けなかった。
住民の意見に耳を傾けながら、庶民の生活を支え、多くの雇用を生み出すインフォーマルセクターの重要性を肌で感じていた郡長だからこそ、できた決断だった。