日本政府のインドネシア総選挙支援(総額二千三百万ドル)の四本柱の一つとして国際協力機構(JICA)専門家チーム十七人が、選挙物資の配付などロジスティック支援、地方総選挙委の研修などを行った。全国六地域を起点に活動した専門家チームを率いたのは、一九九二年のカンボジアを皮切りに世界十カ国で選挙支援に携わった総選挙アドバイザーの黒田一敬さん(四三)。黒田さんに支援の様子や選挙支援の意義などについて聞いた。
JICA専門家の派遣は九九年総選挙に続き二回目。今回の専門家たちも、元青年海外協力隊員、元インドネシア駐在員、海外選挙の監視を経験した非政府組織(NGO)職員ら、いずれもインドネシア語や文化に精通し、選挙支援に熱意を燃やす十七人だ。
専門家たちは、ジャカルタのほか、東ジャワ州スラバヤ、バリ州デンパサール、南スラウェシ州マカッサル、南カリマンタン州バンジャルマシン、北スマトラ州メダンを基点に、全国各地で選挙物資の配付などのロジスティック支援や、州・県レベルの総選挙委員から投票所の係員に対する研修を実施した。
■汗を流し連帯感
黒田さんは「地方の総選挙委は、常設機関として、総選挙後も責任を持って大統領選、地方首長選を運営していかなければならない。そのためにも専門家を地方の総選挙委に派遣して支援を行うことが重要で、こうした支援を行っているのは日本だけです」と、地方支援の意義を語る。
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「選挙を通じて知り合った仲間との再会が楽しみ」と黒田さん
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ナザルディン・シャムスディン総選挙委員長からは「アジアの同胞として、共に手を携え、新しい民主主義を定着させていこう」との激励を受けた。
「当初は不安がっていた専門家たちだったが、選挙の成功のために総選挙委員らと一緒に汗をかいて頑張っていく姿勢がインドネシア側にも伝わり、連帯感が生まれていった。投票日の前日、(バリ、東・西ヌサトゥンガラ州担当の)北村達也専門家(四三)が、総選挙委員とともに管轄地域の準備が完了したと電話をかけてきた時は涙が出るくらいうれしかった」と黒田さん。
■民主化の確実な一歩
昨年四月から総選挙委本部に派遣された黒田さんは、今回の総選挙を「課題も散見されたが、実務的観点から見れば、民主化の一歩を確実に歩んできた結果が出た」と評価する。
「総選挙委は前回、政府任命の五人、各政党から一人の四十八人と計五十三人となり、物事を決めるのが大変だった。しかし、独立機関となった今回の総選挙委は、委員九人が緊密に連絡を取り合うなど役割分担がしっかりしており、一定の基準の下、公明正大かつ緻密な審査で二十四党を選ぶことができた。事務局や関連省庁との連携にも進歩が見られ、(準備の遅れや投票延期に対応する)緊急政令の発令についても大きな混乱を出す前に発令することができた」と総選挙委の成長ぶりについて語る。
地方や住民レベルの総選挙に対する姿勢についても「州、県、郡、投票所レベルに至るまで、自分たちの手で選挙を作り上げていこうという姿勢が感じられた。相互扶助、共同体意識を持つ意義として今後のインドネシアに良いものを残せたと思う」と語った。
■仲間との再会楽しみ
黒田さんが海外で平和構築、選挙支援に携わったのは、今回で十三回目。
九二年に国連ボランティアとして訪れたカンボジアでは同僚の中田厚仁さんの死に遭遇。以来、国連職員、JICA専門家などとして、モザンビーク、ボスニア・ヘルツェゴビナ、東ティモールなど世界の紛争地で平和構築に向け、十一年間、突っ走ってきた。
そんな黒田さんの楽しみは各地で仕事を共にした仲間との再会。今回の総選挙でも各国の選挙で出会ったインドネシア、日米欧豪などの選挙監視団やNGO、選挙を取材するジャーナリストらとの再会があった。
「インドネシアが、広大な領土、民族の違いを超えて今回の総選挙を成功させたことに達成感を持って、その経験を世界に誇ってほしい。そうした経験を持ったインドネシア人たちが、日本人と手を携えながら、今度は民主化を支援する立場となってくれることを期待している。世界のどこかでまたインドネシア人と会えたらいいですね」と黒田さんは話している。