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2005年5月28日 じゃかるた新聞掲載

海洋民族マンダル人(上)

消えゆく伝統帆船 スラウェシ漁民の生活追う

 スラウェシ島の玄関口マカッサルから北へ約三百五十キロ、同島西岸の西スラウェシ州ポレワリ・マンダル県パンブスアン村には、小型帆船「サンデック」を用いた伝統漁法で生計を立てる海洋民族マンダル人が暮らしている。村では、高床式の家屋から女性たちが織る機織りの音が漏れ、漁を終えた男性たちは海岸沿いのヤシの木の木陰で談笑する昔ながらの光景が広がる一方、昨年末に携帯電話が通じるようになり、五年前にはなかった冷蔵庫など家電も普及し始めている。伝統文化と現代文明の狭間に生きるサンデックの故郷パンブスアン村の暮らしを取材した。

帆を立てて漁へ向かうサンデック
帆を立てて漁へ向かうサンデック
パンブスアン村の位置
パンブスアン村の位置
 まだ夜の明けない午前四時すぎ、海岸では、日に焼けて肌が真っ黒な漁師たちが次々と出漁して行った。
 漁師歴十年のウスリンさん(二八)によると、パンブスアン村の男たちは十七歳で一人前の漁師として認められると、三、四人一組で、村から南西へ約五十キロ先のスラウェシ海峡の漁場へ向かう。
 漁場では、サンデックに積んだカヌーに乗って、重りを付けた釣り糸を海底約三十メートルまで垂らす。狙いは、一キロ一万七千五百ルピア(約二百円)で仲買人が買い取ってくれるマグロやトビウオ。三日間の漁で約五十─百キロ獲れる。
 収穫した魚は隣町マジェネの市場で取り引きされるほか、最近では、対岸のカリマンタン島の仲買人と水上で売買するようになった。「月五回の漁で、収入は百─百五十万ルピア(約一万一千─一万七千円)。風が出て豊漁が期待できる来月が楽しみ」とウスリンさん。

■エンジン付き漁船が人気

 ウスリンさんが乗るサンデックは、全長十メートル、幅六十センチの細長い船体に二本のアウトリガーを付けた木造帆船。三角の帆で風を受け、十ノット以上のスピードが出せるサンデックは、オランダ統治時代以前からスラウェシ海峡の海原を颯爽(さっそう)と走り抜けてきたマンダル人自慢の船だった。
 しかし、十年前に百隻あったサンデックは二十隻まで減少。理由はエンジンを搭載した「ボディ」と呼ばれる現代漁船の普及だ。漁場まで九時間かかるサンデックに比べ、ボディは六時間で着くため、サンデックを捨て、ボディに乗り換える漁師が相次いだ。
 サンデックに乗るウスリンさんは「ボディを買う余裕がないのかと近隣の村人たちに馬鹿にされる。いつも恥ずかしい思いをしているので早く乗り換えたい」と語る。
 西スラウェシ州政府も南スラウェシ州から分離したばかりで経済的な余裕はない上、「漁民の利益向上を妨げるようなことはできない」(モハマッド・マジェネ県知事)。長年マンダル人の生活を支えてきたサンデックが消えようとしていた。



つづく


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