十八日午前十一時半ごろ、中央ジャカルタ・ジャクサ通りに近いクボン・シリ地区の民家から出火、火は瞬く間に付近の住宅密集地に広がり、民家六十戸が全焼した。家財道具を抱えて避難する女性、座り込んで泣き叫ぶ子供。降って湧いた災難に、住民たちは悲しそうな表情を見せていた。しかし、男たちが団結してバケツリレーをするなど、忘れかけていたゴトンロヨン(相互扶助)の精神を発揮して、被害の拡大を食い止めた。
 | 火はあっという間に数十軒の家屋を飲み込んだ
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 | 必死のバケツリレーを行う住民たち
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細い路地から、現場へ入ろうとすると、衣類や電化製品など家財道具を抱えた女たちが走って出てきた。幼い子供がしゃがみこみ、泣き声を上げている。
約十台の消防車が、近くのワヒド・ハシム通りにまで来ていたが、狭い路地に入れず、消防士が長いホースを抱えて現場へ突進して行く。被害の拡大を食い止めようと、住民たちがバケツリレーで消火活動を始めた。
バケツ、洗濯用のおけ、調理用のボウル…。水が入るものなら、何でも持ち出して、側溝の汚水や付近のモスクのお清め用の水を汲んで、火に向かってぶちまける。普段は必ずしも団結しているとはいえない都心のカンプンだが、男たちは、びしょ濡れになって必死の消火活動を行っていた。
すでに十数戸の民家を焼き、野火のようにメラメラと隣の家に燃え移っていく炎に対して、バケツ消火はあまりにも非力。消防車のホースがようやく現場まで到達したが、どうしたわけか、水は出てこない。いら立つ住民は、忌々しげにホースを蹴飛ばしたり、消防士に「邪魔だ、どけ」と罵声を浴びせる。
突然、「危ない、下がれ」と、誰かが叫ぶ。全焼した住宅の二階部分が大きな音を立てて崩落。バケツリレーの部隊は、間一髪のところで、巻き込まれずに済んだ。男たちは、危険を避けるため火災の中心部から後退せざるを得なかった。
火災発生から一時間以上が過ぎた午後零時半ごろ、ようやく消防士が放水を始めた。
ワヒド・ハシム通りに戻ると、大勢の野次馬に混じって、疲れ切った顔でかがむ女性たちの姿があった。「二十年も住んでいた家が焼けてしまった。どこに行けばいいのか」
火災が完全に鎮火したのは午後二時近く。ジャカルタ特別州消防局の発表によると、民家約六十軒が全焼し、住民ら十人が負傷した。出火原因は電気系統のショートとみられている。