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2004年11月29日 じゃかるた新聞掲載

西博士が語る火山大国インドネシア(8)
高速落下する火砕流 ムラピ火山に国際観測陣

 ムラピ火山は中部ジャワの古都・ジョグジャカルタの北北東約三十三キロに位置するインドネシアを代表する活火山の一つです。
 ボロブドールの遺跡はムラピ火山の噴出物に埋没していましたし、プランバナン寺院群を建設したサンジャヤ王朝を東遷(西暦九二八年)させたのも、ムラピ火山の噴火が原因とする説が有力です。
 ムラピ火山では溶岩ドームが火山体内部の圧力によって上昇成長し、しまいには一部が破砕され、崩落します。
 このとき、溶岩ドームを形成していた高温の溶岩の破片物質の団塊が斜面を転がり落ちます。破砕された高温の溶岩の内部からは、火山ガスが噴出します。
 また、細分化されて表面積の広くなった高温部分により、周辺の空気が加熱され急激に膨張し上昇気流が生じます。
火口縁から見た溶岩ドームの先端(1992年1月、撮影はJ・トンドゥール氏)
火口縁から見た溶岩ドームの先端(1992年1月、撮影はJ・トンドゥール氏)
 このため斜面との摩擦係数が低くなり、火砕流は斜面を高速で降下します。このタイプの火砕流はムラピ火山でよく起きるため、世界的にムラピ型火砕流と呼ばれています。一九九一年に四十三人の犠牲者を出した雲仙普賢岳の火砕流は典型的な例です。
 過去百年間で千四百七十九人の犠牲者が火砕流と泥流により出ています。このうち一九三〇年十二月十八日に発生した火砕流による被害が最も大きく、十三の村落が壊滅し、二十九以上の村落に部分的な被害があり、千三百六十九人が亡くなりました。
 現在、インドネシアの活火山の中では、ムラピ火山は火山観測が、最も充実して行われています。これは米国、フランス、ドイツ、日本の各国がそれぞれ独自に火山局と協定を締結し観測を行っているためで、インドネシアの火山の中では極めて特殊なケースです。
 人工衛星からの電波を受信し精密な位置測量を行うのに必要な精密GPS受信機をバンドンの火山局本部では二台しか保有していませんが、ムラピ火山観測所には各国からの供与により九台あるのもその例です。
 ドイツは小、中規模の人工地震を発生させて、ムラピ火山下部の地震波速度構造を解明するのに熱心です。
 インドネシアの多くの活火山は、一地点の地震計による観測で火山活動の監視が行われていますが、ここでは多地点観測が行われています。
 発生した地震も六種類に分類され、それぞれの発生頻度と火山活動との対応が調査されています。六種類ある地震のタイプの一つにMP型(Multi-Phase type)と呼ばれているのがあります。
 これは一九六八年に東京大学の観測班が行った観測結果に基づいて同大学のS博士が命名したものです。溶岩ドームの上昇に伴って発生するものとされ、現在でもこの名称が使用されています。
 なお、地殻変動部門責任者のS氏は、インドネシアの大学を卒業後、JICAの砂防・火山学研修で日本において約半年の研修を受けた方です。
 また、現在、二人の観測所職員が京都大学で研鑽を積んでいます。ムラピ火山観測所は日本とつながりの深い観測所です。


つづく


西博士が語る火山大国インドネシア
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