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2004年3月18日 じゃかるた新聞掲載

「チンタに何があったのか?」 来年初めに日本公開
 「ストレートでさわやかな恋愛」
 「クオリティー、娯楽性も高い」
 配給会社エデン・古谷文雄氏に聞く

 二年前にインドネシアで公開され、インドネシア映画史上最大となる二百五十万人の観客動員数を記録した青春恋愛映画、「チンタに何があったのか?(邦題未定─Ada Apa Dengan Cinta?=A2DC)」(ルディ・スジャルウォ監督)が来年初め、東京で公開されることが決まった。買い付けを決めたのは、一九九八年に日本公開され、日本におけるインド映画の火付け役となった「ムトゥ 踊るマハラジャ」の仕掛け人でもある映画配給・製作会社エデンの古谷文雄・代表取締役。江戸木純の名前で映画評論家としても活躍する古谷さんに、買い付けまでの経緯やA2DCの魅力などについて語ってもらった。

 古谷さんがA2DCを知ったのは、二〇〇二年末。マレーシアに行った時に購入した数十本のVCDのうちの一本だったという。
 「よく調べたら、インドネシア映画でした。昔、買い付けをしていた時、インドネシア映画はアクション、ホラーなどのB級映画が多かった。三年前にバリ島に行った時もインドネシア映画のVCDを買ってきたが、あまりすごいというイメージはなかった。A2DCはこれまでの私のインドネシア映画のイメージとはまったく違っていました」
「チンタに何があったのか?」で好演したディアン・サストロワルドヨ
「チンタに何があったのか?」で好演したディアン・サストロワルドヨ
 海外でインドネシア映画が知られていないこともあって、A2DCに関する情報は非常に限られていたが、インターネットで調べた結果、A2DCが釜山の映画祭に出展されていたことが分かった。そこを通じ、製作プロダクションであるマイルズ・プロダクションにコンタクト、日本配給の話を持ちかけ、同意に至った。

■キャスト、音楽を評価

 古谷さんが見るA2DCの魅力は、キャスト、音楽の良さ。主演のニコラス・サプトラ、ディアン・サストロワルドヨは日本人受けする美男、美女で、作品のクオリティーも高く、娯楽性もあると評価する。
 「ストーリーもありがちだが分かりやすいもの。日本ではやらないくらい、ストレートでさわやかなところが逆に新鮮に映るのでは」。
 古谷さんによると、各国でヒットした作品は、それぞれ面白いものを持っているという。インターネットの普及が世界的な情報の共有を可能にし、これまではその国独自の価値観でのみ理解されていた面白さが、グローバル化の影響で、他国でも通用する作品が増え始めている。
 しかし、大手配給会社が触手を伸ばさないことなどから、その国でメジャーな娯楽作品でも、海外に出ていく機会は少ないのが現状。
 「既存の配給会社がやらないところだから、意義があると思っている」と語る古谷さんは、自分が個人的に面白いと思った作品をできるだけ多くの人に観てもらいたいとの一心で、配給製作会社を立ち上げた。

■女優を前面に宣伝

 今後の課題は宣伝戦略。古谷さんは「作品を買い付けるところというのは、多分本当にスタートの前という感じ。これからどうやって認知させるか。宣伝が一番難しい。宣伝のやり方をちゃんとやらないと、結局、ダメなので」と語る。
 「題名にしたって、『アダ・アパ・ドゥンガン・チンタ?』と言っても『何?』という感じになってしまう。それをどうやって伝えてあげるかが一番難しいところ。ポスターもこのままでは厳しいと思います」。
 例に挙げたのが「ムトゥ」公開時のパブリシティー戦略。古谷さんは「主人公が大スターの映画だったから、インドでは彼の顔を出さないことは考えられなかったが、日本では彼の顔を出すと逆に引いてしまうというような感じがあったので、あえて女優さんだけのポスターにした」と説明する。
 「そういうやり方をしていかないと注目してもらえない。日本では映画を観る人の九割くらいがハリウッド映画で、残りが日本映画。なかなか、観てもらえるお客さんは限られている。きっちりみせることが必要だ」
 具体的には、古谷さんが現在取り組んでいる「丹下差膳」が公開される夏あたりからプロモーションを始めていきたいという。
「チンタに何があったのか?」を高く評価する古谷さん
「チンタに何があったのか?」を高く評価する古谷さん
 「ディアン・サストロワルドヨという女優の魅力が大きいので、彼女のプロモーションを中心にやらざるを得ないと思う。じゃかるた新聞のホームページでもインタビューを見たが、いろいろ考えていると思う」。

■従来のアジア観脱却を

 「アジアの映画というと、貧しい人たちが頑張っているというような作品を観て、かわいそうと感じるのが、いい映画だと思っているような時代があったが、僕はそういった風潮がイヤだった」と語るように、古谷さんは一般的な日本のアジア映画観には懐疑的だ。インド映画でもそうであったように、A2DCを通じ、ステレオタイプからの脱却を呼び掛ける。
 「そこを刺激して、見に来させるような風潮はあるが、そういう部分ではなく、ポップカルチャーの最先端を観てもらいたい。新しいセンスと映像と音楽、かつ純粋なハートがあって。日本なんかはひねくれていて、同じことをやっても多分面白いものは作れないと思う。知られていない映画でも、そういうものがあるということを分かってもらいたい」

◇古谷文雄さん

 1962年生まれ。映画会社勤務などを経て、映画評論家に。「江戸木純」の名で執筆活動を開始する。「ムトゥ 踊るマハラジャ」を発掘し、日本でインド映画ブームを巻き起こした後、98年末に、妻の川崎のり子さんと、映画配給・製作会社の有限会社エデンを設立。スウェーデン映画の「ロッタちゃん」シリーズ、米映画の「処刑人」を配給、日中合作の「王様の漢方」をプロデュースするなど、評論家の枠を超える多彩な活動を展開している。企画、脚本、プロデュースを手掛けた山中貞雄監督作品のリメイク「丹下左膳・百万両の壷」(監督・津田豊滋、主演・豊川悦司)は、今年夏に恵比寿ガーデンシネマで公開予定。




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