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2004年4月30日 じゃかるた新聞掲載

芥川3作品を翻訳出版 「羅生門」「藪の中」「鼻」
 インドネシア大学日本研究科
 バンバン・ウィバワルタさん
 「日本文学の魅力伝える」

 日本近代文学を研究するインドネシア大日本研究科教官のバンバン・ウィバワルタさん(三七)がこのほど、財団法人「大同生命国際文化基金」の助成を受け、大正時代に活躍した文豪、芥川龍之介の短編「羅生門」(一九一五年)、「藪の中」(二二年)、「鼻」(一六年)のインドネシア語版を出版した。バンバンさんが日本文学の翻訳本を出版するのは、森鴎外の「舞姫」などに続き二冊目。インドネシアにおける日本文学は、これまで英訳からの翻訳本が多く、誤訳がほとんどだったが、バンバンさんの翻訳本は日本語の原文から直接訳した。日本語の微妙な表現も正確に訳しているため、「日本の文豪の作品がこれほど面白いとは思わなかった」と感想を述べる学生や文学者たちに日本文学の「本当の魅力」を伝えている。

 全二百三十二ページにまとめられた翻訳本は、旧字体を使用し、漢字にふりがなを付けた日本語の原文を左ページに、インドネシア語訳を右ページに配置して日本語の原文とインドネシア語訳を同時に読めるようになった。芥川龍之介を知らないインドネシア人読者のために、芥川の生涯や時代背景、そのほかの作品についての解説を挿入し、より作品を楽しめる工夫も凝らされている。

■表紙も自らデザイン

 バンバンさんは、学生時代から日本の友人に文庫本を送ってもらうなどして、日本近代文学に没頭。一九九一年から約三年間、東北大学文学部や同大学院に留学するなど、日本の文学研究者との交流も深く、日本語も堪能だ。
10月にも翻訳本を出版するバンバンさん
10月にも翻訳本を出版するバンバンさん
 今回の翻訳本の出版に当たっては、バンバンさんの活動に共鳴した国際基督教大の染谷臣道教授(六二)からの申し出を受け、昨年九月、大同生命国際文化基金の助成を獲得。これまでこつこつと翻訳してきた芥川龍之介の短編三編の翻訳を三カ月かけて完成させた。芥川龍之介に対する自身のイメージを表現しようと、表紙も自らデザインした。

■美しい言葉の芥川作品

 芥川龍之介を選んだ理由について、バンバンさんは「日本文学の短編小説と言えば、何と言っても芥川。言葉使いがきれいでスムーズな言い回しをするので、文章が読み易い。(羅生門の)ニキビを気にする下人、死人の髪の毛をむしる老婆といった細やかな描写が作品を支えているし、そうした小さなテーマが作品全体のテーマを支えている」と語る。
 数ある作品の中から「羅生門」「藪の中」「鼻」を選んだ理由については「黒澤明監督の映画『羅生門』はインドネシアでも知られているが、映画のストーリーが『藪の中』であることを知る人は少ない。僧侶が主人公の『鼻』については、宗教が関わる外国の作品を紹介したかった」と語った。

■「日本文学は面白い」

 芥川作品はこれまで「河童」「羅生門」のインドネシア語訳はあったが、英訳からの翻訳で、羅生門のエンディングが書き換えられるなど誤訳が多く、本来の魅力を伝えられずにいた。
 このため、バンバンさんは全国の文学者や図書館のほか、日本語を教える国内の高校、語学学校約五百校に翻訳本約三千部を配布。日本の文学や文化を理解するバンバンさんの翻訳本を読んだ学生からは「日本の文豪の作品がこれほど面白いとは思わなかった」との感想が届き、「日本文学について聞きたい」と、バンバンさんの研究室を訪問したり、大江健三郎の研究を始める国内の文学者が現れた。

■次は大正期の文豪を

 「十月には、同じ芥川作品である『河童』『芋粥』『蜘蛛の糸』の翻訳本を出版します。村上春樹など現代文学の翻訳も面白いが、やはり谷崎潤一郎、樋口一葉、田山花袋、二葉亭四迷ら明治、大正の文豪をインドネシアに紹介したい」と、今後も近代日本文学の翻訳に意欲を見せるバンバンさん。
 最近は、ジャカルタ特別州の要請を受け、姉妹都市東京都との交流事業計画にも参加しており、「労働や文化芸術の分野で日イの人たちが心を通じ合わせることが出来る交流事業を作っていきたい」と話している。




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