詳報・味の素事件 詳報・味の素事件

 注目を集めるインドネシア味の素事件。経過に沿って
 じゃかるた新聞掲載の記事を紹介します

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1月4日付本紙に掲載

味の素に回収命令

宗教省と保健省

「イスラム法に反する」

製造過程の改善を指示

 保健省の薬品食品監査局は三日、インドネシア味の素社が、「味の素」の製造に必要なバクテリアの育成過程で、イスラム法に抵触する製品(バクトソイトーンと呼ばれるバクテリアを育てるための添加物)を使用していたとして、味の素の製品をイスラム教徒が摂取できない「ハラム」の食品であると断定し、同社に対し製品を三週間以内に市場から回収するよう命じた。また、問題のバクトソイトーンに代わり、マメノ(豆濃)という別の添加剤を使用すれば、イスラム教徒が摂取できる「ハラル」に認定すると発表した。
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1月8日付本紙に掲載

日本人社長からも聴取

消費者保護法違反

東ジャワ工場の生産中止

 インドネシア味の素社(北ジャカルタ・スントゥール)が、イスラム法で摂取を禁じられている豚の成分を原料とする酵素を「味の素」の製造過程で使用していた問題で国家警察は七日、ジャカルタ本社の荒川満夫社長から消費者保護法違反(虚偽の表示)の疑いで事情聴取を開始した。国家警察は六日、東ジャワ州モジョクルト工場の小山洋介技術担当役員とインドネシア人幹部の五人を逮捕しており、虚偽の表示が荒川社長の指示によるものかどうかを中心に取り調べた模様だ。同社は東ジャワ州のモジョクルト工場の生産を中止、市場に出回っている約三千トンの味の素の回収に全力を挙げている。
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1月8日付本紙に掲載

ハラム断定をめぐるナゾ

大統領の支持勢力「国家経済に混乱狙う」

 イスラム指導者会議(MUI)が、味の素を「ハラム」と断定した背景には、いくつかのナゾが指摘されている。アブドゥルラフマン大統領に代表されるイスラムの世俗化に寛大な勢力と、そうでない勢力の対立。スハルト政権をはじめ歴代政権にその権威を低く見られていたイスラム指導者会議の権威回復の動きなどが、微妙にからんでいるのではないかという見方だ。
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1月9日付本紙に掲載

荒川社長を2日間拘束

小田副社長も取り調べ

味の素事件で国家警察

 インドネシア味の素の消費者保護法違反事件を捜査している国家警察とジャカルタ警視庁は八日も、荒川満夫社長の最高責任者としての容疑を固めるため、身柄を拘束して取り調べた。尋問は二日間にわたった。一方、東ジャワ州警察本部はモジョクルト工場の最高責任者である小田康副社長を八日未明、同本部に召喚し、身柄を拘束して同日深夜まで取り調べた。これで、取り調べを受けた日本人幹部は、留置中の小山洋介技術担当役員を含め三人となった。
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1月9日付本紙に掲載

改善命令で決着狙う

保健省薬品食品監査局の見解

 二日に開催された宗教省、保健省、イスラム指導者会議(MUI)、MUI薬品食品調査局の会議を受けて三日に発表された保健省薬品食品監査局のサンプルノ局長名の「味の素に関するプレスリリース」は、味の素の製造過程を、(1)グルタミン酸ナトリウムを製造する発酵・精製の最終工程と(2)その前段として、最終工程に必要な発酵菌を作る過程の二つに分け、(1)の発酵・精製過程は「豚の成分を含んでいない」とする一方、(2)の前段階では「豚を含んでいる」と断定。その上で、二つの工程を経た味の素を「ハラム」(摂取できない)と結論づけている。だが、味の素側が(1)マメノという添加物を使用して新製品を生産する(2)旧製品を市場から回収する−の二点を条件に、味の素事件を決着に持ち込もうとする姿勢がうかがえる。
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ジャカルタ都心のイスティクラル寺院の前で
「味の素」を燃やす抗議のデモ隊


1月9日付本紙に掲載

「ハラル」で商売するな

 イスラム青年たちがデモ

 八日午後一時半ごろ、イスティクラル寺院地下にあるイスラム指導者会議(MUI)本部にフォーラム・インドネシア・レサー(インドネシアを憂慮する会)と名乗る活動家三十人ほどが押し掛け、(1)味の素社のインドネシアにおける営業停止処分(2)MUIの解散、新組織によるハラル監督の実施−の二点を要求した。味の素の包みに火をつけ、雄たけびを上げた。  MUI解散の理由として、メンバーの一人は「MUIはハラル問題を監督する組織でありながら、ハラルの認証で商売をしたり、政治的に利用している。スハルト政権時代、豚肉疑惑が浮かんだ食品業者はいくつかあったが、MUIは政府よりの組織としてハラムの事実を握りつぶした経緯がある」と説明した。


1月10日付本紙に掲載

大統領「味の素は食べてよい」

イスラム指導者会議に挑戦

安全宣言で収束狙う

 アブドゥルラフマン大統領は九日、訪問中の高村正彦法相との会談で、インドネシア味の素問題に触れ、「味の素に豚の成分は含まれていない。味の素はハラル(イスラム教徒が食べてもよい食品)である」と述べ、イスラム指導者会議(MUI)が「ハラム」(摂取禁止)と断定した結論を真っ向から否定した。この会談を説明したウィマール・ウィトラール大統領報道官は「大統領は味の素問題を宗教的な問題ではなく、まったくの政治問題と受け止めている」と語り、味の素問題についての大統領の公式見解を初めて明らかにした。イスラム指導者会議にあえて挑戦し、味の素の安全宣言をすることで事態収束を狙った大統領の発言は、味の素幹部の刑事責任を追及中の警察当局への圧力になるばかりか、宗教上の論議に拍車をかける恐れもあり、味の素問題の行方は、いよいよ波乱含みになってきた。
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1月10日付本紙に掲載

関連の調味料も回収

ハラル認可のあと新商品

味の素会見

 インドネシア味の素ジャカルタ本社は九日、荒川満夫社長ら幹部が国家警察の調べを受けてから初の記者会見を同社近くのホテルで、内外の報道陣約二百人を集めて行った。
 人事課のススシヤント氏が会社の声明を読み上げ、「全インドネシア国民に心から謝罪する」と述べたあと、(1)全商品を回収する。関連商品のマサコとサジクも回収する。小売店からは卸価格で商品を買い取る(2)全商品の回収を済ませ、新商品のハラルの認証を受けた後、新商品の流通を行う−と発表した。
 逮捕された荒川満夫社長についてアミル・シャミルディン弁護士は「八日昼すぎに容疑者となった。個人的な意見だが、警察の素早い対処が一部の過激なグループが独自の行動を取るのを抑止している。荒川氏は捜査に協力しており、われわれは身柄の拘留を解くよう警察側に働きかけている」と語った。
 さらに「味の素が、一兆三千億ルピアの新規投資を取り消すという報道があったが事実でない。味の素社は宗教上の問題を投資の問題より重要と考えている」と述べた。
 「豚の成分使用で問題となっているバクトソイトーン(バクテリアの栄養分となる添加物)を使用したのはなぜか」と聞かれ、ススシヤント氏は「バクトソイトーンはコスト高になるが生産性が高いので使用した。豚の成分が使用されていることは、アメリカの製品なので認知していなかった」と答えた。
 「バクトソイトーンを採用した時、なぜ、イスラム指導者会議に報告しなかったのか」との質問に明確な回答はなかったが、アミル弁護士は「捜査の進展を見て技術者がきちんと説明する必要がある。しかし、バクトソイトーンは味の素の直接的な材料ではない。一滴たりとも豚の成分は味の素に入らない」と声を大きくして説明した。


1月11日付本紙に掲載

「最終製品に豚はない」

政府機関が大統領援護

加熱する味の素論争

 「味の素は食べてもよい」「騒ぎの背後に政治勢力がいる」というアブドゥルラフマン大統領の九日の爆弾発言は、政府当局、イスラム勢力を巻き込んだ論争に火を付け、国会再開を控えた政局にも微妙な影を投げかけている。
 大統領は十日、「味の素工場が閉鎖になれば、一兆三千億ルピアの新規投資がふいになる。他の外国投資にも悪影響を及ぼす」と述べ、味の素を「ハラム」(摂取禁止)と決めたイスラム指導者会議(MUI)の決定を改めて批判した。
 国論がまっぷたつになりかねない情勢だが、大統領は「解釈の違いだ。レバラン(断食明け大祭)の日取りを決める際もいろいろな意見が出る。イスラム教徒が自分で判断すればよい」と述べ、極めて柔軟で現実重視のイスラム指導者の面目躍如なところを見せた。
 イスラムを普通の人々の生活や信条のレベルにとどめ、人間らしい世俗的なイスラムを標榜する大統領が、政治と宗教を合体させようとする保守的なイスラム指導者に挑戦状を突き付けたかのような反論。
 大統領の「ハラル宣言」(摂取可能)を援護射撃に出たのが、側近の一人、ムハマッド・ヒカム国務相(研究・技術担当)が管轄する技術評価応用庁(BPPT)。十日、約二百人の報道陣を集め、ウマル・ジャニ・ガジャマダ大学教授が「バクトソイトーン(バクテリアを培養するための添加物)を製造する過程で、豚の成分が使用されたのは事実だが、最終製品の味の素に豚の成分は含まれることはない」とオーバー・ヘッドプロジェクターを使用しながら熱弁。
 保健省のサンプルナ薬品食品監査局長も「科学的に見ると豚からの成分は最終製品に一切残っていない」と大統領の主張を弁護した。
 政府の巻き返しに驚いたイスラム指導者会議幹部のアミダン氏は「ハラルかハラムかを決める機関はイスラム指導者会議だ。味の素がハラムであるという決定をだれも覆すことはできない」と態度を硬化させた。
 消費者団体の告発を受けインドネシア味の素社幹部の刑事責任を追及している国家警察のサレ・サアフ報道局長は十日、「捜査は続行する」と語り、政府や宗教界の論争とかかわりなく消費者保護法違反事件として捜査を継続することを明らかした。中立を装う警察もメンツをかけての捜査を迫られる。


1月12日付本紙に掲載

荒川社長ら7人を釈放

味の素事件で国家警察

大統領の安全宣言で

刑事事件捜査は一段落

工場再開が焦点へ

 インドネシア味の素の消費者保護法違反事件を捜査している国家警察と東ジャワ州警察本部は十一日午後七時すぎ、小山洋介技術担当役員ら東ジャワ・モジョクルト工場の幹部四人を釈放した。これに続き、ジャカルタ警視庁も、同日午後九時すぎ、荒川満夫社長、チョコルダ・バグース・スダルタ総支配人ら三人を釈放した。この事件で日本人幹部三人が取り調べを受けたが、全員が釈放され、事件捜査は一段落する。東ジャワ州警察が操業停止命令を出したモジョクルト工場の再開が今後の焦点となった。
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