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2000年12月30日のトップニュース

テロで終幕した2000年

幻想破れ、改革機運に陰り

守旧派のしぶとい抵抗続く

 アブドゥルラフマン大統領への大いなる幻想が、はかなく崩れ去った一年だった。期待が裏切られ、人々の間にアナーキーなムードが漂い始めた。それに乗じた守旧派による陰惨なテロが増えている。今年のインドネシア情勢をめぐるキーワード−幻想崩壊、地方禍炎上、国会野党化、テロ日常化、守旧派健在、不正復活、労働攻勢、軍低姿勢−を軸に、写真記者たちの仕事を本紙の二、三ページに再録した。

 大統領が小気味よく指導力を発揮したのは、ウィラント氏(政治・治安担当調整相)を解任し、軍の人事に積極介入した三月ごろまでだった。
 政治的ハネムーンが終わると、政権内亀裂が表面化、閣僚入れ替えで、その場をしのいだ。初めて定例化した八月国民協議会で、責任演説を迫られて最大の危機に直面したが、内閣改造で逃げ切った。

▽テロリスト徘徊

 だが、大統領の危機管理能力に陰りが出ると、ジャカルタの街にテロリストが徘徊し始める。最高検爆破(七月四日)、比大使公邸爆破(八月一日)、マレーシア大使館への爆弾(八月二十七日)、証券取引所爆破(九月十三日)、全国のキリスト教会同時爆破(十二月二十四日)と相次いだ。華人とキリスト教徒の拠点であるスマトラ島のメダンでも、毎月のように教会が狙われた。
 その結果、通貨は一ドル九〇〇〇ルピア台に落ち込んだままだ。
 イスラムのキリスト教攻撃の形を装ったテロは、マルク諸島で起きた不毛の惨劇を全土に広げようとする狙いがある。少数派を恐怖に追い込み、社会不安をかき立て、軍のクーデターを含む暴力的な政変を期待する集団が勢いを付けている可能性がある。

▽色あせたジョーク

 そうしたアナーキズムの背景に、大統領の政策欠如と指導力低下がある。国民の話題にもなった放言、食言、珍説が、政権亀裂を招き、内政、外交に混乱を起こしただけでなく、スハルト旧政権の不正追及や、債務問題の解決を先延ばしにし、改革ムードを大きく後退させた。得意満面、大統領の放ったジョークが、就任当初の新鮮なエスプリを失い、口は禍のもとになってしまった。
 「イリアンジャヤをパプアと呼ぼう」の放言がパプア独立運動に火を注いだ。アチェ人に約束した住民投票は反故になり、宗教対立のマルク諸島は戒厳令で押さえ込んでいる。
 「シンガポールへの水を止めろ」という暴言は、かつて東南アジア諸国連合(ASEAN)の盟主を自認したインドネシア外交の誇りを台無しにした。

▽中途半端な仕事

 歴史見直し、非政府組織(NGO)の活性化、人権尊重、軍の文民統制など、大統領はイスラム教養人としての知性に裏付けられた多くの問題を手がけたが、どれも中途半端。民主化で労働運動に歯止めがきかなくなったとなげく投資家も多い。
 食糧調達庁の職員の基金に手をつけたり、外国の王様に活動資金を貢がせたり、スハルトの息子に恩赦を与えるかどうかの瀬戸際で、金銭取引の疑惑のわなにはめられるなど、カネにダーティーな面がマスコミに暴露され、娘の直言を受けて、弱音を吐くところまで追い詰められている。

▽軍の横暴暴く

 もちろん、歴代の大統領にない、いい仕事もして見せた。軍のメンツをたてながら軍を低姿勢に押さえ込み、警察軍を軍から切り離し、セックスシーンが描けるほど新聞・テレビを自由化し、田舎議員がかっこよく振る舞えるほど議会を活性化させた。
 なにより、民主化の大きなうねりを逆行させる時代錯誤の動きを、なんとか押さえこんできた点も高く評価できる。フィリピンのマルコス政権崩壊後のクーデター騒ぎ(一九八〇年代末)、ミャンマー軍の民主勢力弾圧(同)、冷戦崩壊で失った利権の回復を狙ったタイ軍の五月流血事件(一九九二年)−など、アジアの軍が繰り返してきた市民社会抑圧の二の舞を、東南アジア最大の軍事国家だったこの国で、かろうじて防いできたからだ。
 スハルト政権当時を懐かしみ「いい加減な民主主義はやめてくれ」(ホームページ・よろずインドネシア掲示板)というビジネスマンの気持ちは理解はできるが、それは、できないものねだり。だれが権力を握っても昔に帰ることはできないし、民主主義はインドネシア人が選んだ道なのだ。

▽正念場の政権

 インドネシア最大のイスラム団体を創設した祖父、それを引き継ぎ、独立宣言を起草した父に次いで、三代にわたるイスラム界の重鎮。中東や欧州に十年も留学、サッカー、映画、文学まで論じるインドネシアきっての知識人である大統領の指導力が、いま、改めて問われ、その政権が正念場を迎えている。
 脳梗塞を患い、目が不自由な指導者の健康問題にも国民の懸念が募り、二億人をリードする大統領のパフォーマンスが、新年早々、国会を舞台に厳しく追及されることになる。

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