「戦略的利益を共有」 アジア重視の安倍首相 ユドヨノ大統領と会談 (2013年01月19日)

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 東南アジア歴訪中の安倍首相は18日、政府専用機で東ジャカルタのハリム・プルダナクスマ空港に到着し、同日、中央ジャカルタの大統領宮殿(イスタナ)でユドヨノ大統領との首脳会談に臨んだ。両国は、2006年に両国が発表した「戦略的パートナーシップ」のさらなる強化で一致し、協力関係の継続を確認。対東南アジア外交の基本方針も発表し、普遍的価値観を共有する国との「価値観外交」の推進を鮮明にした。安全保障分野でも、日米同盟を基軸に東南アジア諸国連合(ASEAN)を含む多国間連携で東アジア地域の安定に関与する姿勢を打ち出した。
 安倍政権発足後の初外遊の締めくくりとなった今回の首脳会談。安倍首相は会談後の共同記者会見で「日イは普遍的価値と戦略的利益を共有する特別な関係に発展した」とインドネシアの重要性を指摘し、ユドヨノ大統領も「戦略的パートナーシップを軸に今後も両国関係を発展させたい」と応じた。
 両首脳は貿易投資の促進でも意見交換し、協力関係の強化で一致。安倍首相はインドネシアの発展は地域経済のけん引力になっており、日本経済の再生にとっても重要として、今後も密接な経済協力を続ける意志を伝えた。
 日イの官民が計画を策定した「MPA(首都圏投資促進特別地域)マスタープラン」をめぐっては、迅速かつ円滑な実施に向けて協力することを確認した。昨年10月に両国は2020年までの事業試算総額約410兆ルピア(約3兆5千億円)のマスタープランを承認しており、計画に携わった日系企業の受注が1兆円を超えることが期待されている。
 MPAを包含する全国規模の経済成長促進・拡大マスタープラン(MP3EI)も議題に上がった。安倍首相は会見でインドネシアの鉄道、港湾、上下水道の開発に貢献すると述べ、ジャカルタのMRT(大量高速交通システム)と、西ジャワ州カラワン県のチラマヤ新国際港の建設計画に言及。「日本としても積極的に努力していきたい」と意欲を見せた。安倍首相はタイでは新幹線を売り込み、ベトナムでは原発輸出を推進。政府がインフラ輸出に取り組む姿勢を鮮明にしている。
 ユドヨノ大統領は両国の貿易・投資が拡大する現状を歓迎し「日本はインフラ、エネルギー、工業への投資の中心。問題があれば話し合いたい」と語った。
 前日に首都圏広域で発生した洪水の最中の来イ。安倍首相は「日本に何かできることがあれば支援したい」と表明した。
 安倍首相は当初、今月中の訪米を希望していたが日程調整が難航したため、ASEAN諸国歴訪を先行させた。16日には南シナ海問題で中国と厳しく対立するベトナム、17日はインドシナ半島の中心となるタイで首脳会談。最後の訪問地にASEANの盟主インドネシアを選んだ。
 ジャカルタで1泊する予定だったが、アルジェリアで発生したイスラム武装勢力による日本人を含む人質事件の対応のため、大幅に日程を短縮。首脳会談を終え、同日夜にジャカルタを発った。
 在留邦人との懇談、ASEAN東アジア経済研究センター(ERIA)訪問、政策スピーチ、ギナンジャール大統領顧問委員による表敬、日ASEAN友好協力40周年キックオフ・レセプションへの出席、ユドヨノ大統領主催晩餐会、カリバタ墓地への献花が取り止めになった。

■アジア外交5原則 日米同盟が基軸に

 安倍首相は、政策演説で発表予定だった外交についての基本方針をユドヨノ大統領に会談で伝えるとともに、共同記者会見で発表した。
 方針は5原則として、▽民主主義、人権などの普遍的価値の定着と拡大に努力▽法が支配する自由で開かれた海洋を守る。米国のアジア重視を歓迎▽経済連携を通じて貿易や投資を促進―などを掲げ、ASEAN諸国と連携して進めることを強調した。
 「価値観の共有」と多国間外交を重視する背景には、米国が「アジア太平洋重視」の姿勢を示す中、尖閣諸島周辺を含め、強硬的に海洋進出を続ける中国をけん制する狙いがある。会談では、日・ASEANに加え、米国、中国、豪州など16カ国が参加する東アジア首脳会議(EAS)を、多国間で地域の政治・安全保障問題を首脳レベルで議論する場に育てたい考えを伝えた。
 安倍首相は会見で「中国は経済の面においては日本に間違いなくプラスになる」と前置きしつつも、「国際社会において責任ある行動を取って行くことも重要だ」と指摘。ユドヨノ大統領も南シナ海問題について全ての関係国が国際法を順守し、平和的に解決すべきとの考えを示した。
 年明け以降、麻生太郎副総理、岸田文雄外相が相次いでASEAN諸国を歴訪しており、「中国包囲網」と指摘されていたが、安倍首相は会談で「日本は引き続き冷静に対応し、中国との意思疎通を維持・強化して日中関係をマネージしていく」ことを基本姿勢とすることを説明した。(吉田拓史、道下健弘)

◇ASEAN外交に関する5原則
第1.ASEAN諸国とともに自由民主主義、基本的人権などの普遍的価値の定着と拡大に、ともに努力していく。

第2.力でなく法が支配する自由で開かれた海洋は公共財であり、これをASEAN諸国とともに全力で守る。米国のアジア重視を歓迎する。
 
第3.さまざまな経済連携のネットワークを通じてモノ・カネ・ヒト・サービスなど貿易や投資の流れを一層進め、日本経済の再生につなげ、ASEAN各国とともに繁栄する。

第4.アジアの多様な文化、伝統をともに守り、育てていく。

第5.未来を担う若い世代の交流をさらに活発に行い、相互理解を促進する。

◇近年の日イ首脳の両国往来
2005年 1月  小泉純一郎首相来イ
        (津波サミット)
       4月  小泉純一郎首相来イ
        (アジア・アフリカ会議)
       5月  ユドヨノ大統領訪日
2006年 11月     ユドヨノ大統領訪日
2007年 8月  安倍晋三首相来イ
2008年 7月  ユドヨノ大統領訪日
        (洞爺湖サミット)
2009年 12月  鳩山由紀夫首相来イ
        (バリ民主主義フォーラム)
2010年 11月  ユドヨノ大統領訪日
        (APEC会議)
2011年 6月  ユドヨノ大統領訪日
2011年 11月  野田佳彦首相来イ
        (東アジアサミット)

※追記(2013年1月25日)
 表「近年の日イ首脳の両国往来」で「野田佳彦首相来イ(東アジアサミット)」の時期を、2011年11月に訂正しました。

首脳会談前にユドヨノ大統領(右)と握手する安倍首相=18日、大統領宮殿、吉田拓史写す
首脳会談前にユドヨノ大統領(右)と握手する安倍首相=18日、大統領宮殿、吉田拓史写す

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