真相は闇 「大統領に失望」 KPK捜査官襲撃から1年 (2018年04月12日)

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 大型汚職事件を担当していた汚職撲滅委員会(KPK)捜査官のノフェル・バスウェダン氏(40)が襲撃され重傷を負った脅迫事件から、11日で1年が経過した。国家警察の捜査に進展はなく、いまだ犯人逮捕への重要な手がかりすら見えてこない。KPKや人権団体は真相究明を訴え続け、警察への不信やジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領に対する失望の声も上がっている。

 ノフェル氏は2017年4月11日の早朝、北ジャカルタ区クラパガディンの自宅近くのモスクで礼拝を終えて帰宅途中、オートバイに乗った男2人組に液体を顔にかけられ、左目は失明状態となった。同氏は当時、閣僚や国会議員ら多数の政治家が関与したとされる電子住民登録証(e―KTP)事業費不正流用事件などを担当しており、襲撃は踏み込んで捜査していたKPKへの「見せしめ」との見方が強い。
 e―KTP事件では、汚職の証拠となる音声記録を持っていたとされる実業家のヨハネス・マルリム氏(当時32)が17年8月、米国で突然死亡し物議を醸したが、ノフェル氏の事件の捜査をめぐっても不審な点が指摘されてきた。
 事件には複数の目撃者がおり、現場付近には防犯カメラもあったほか、警察は事件直後に実行犯の写真も入手していたとされる。17年7月にはティト・カルナフィアン国家警察長官がジョコウィ氏と会談後に実行犯の似顔絵を公開。警察はこれまでに80人以上を参考人として聴取し、ホットラインを通じて市民から千件以上の情報が寄せられたというが、犯人の身元も明らかにされていない。

■「大統領は真剣に」
 「真相究明班(TGPF)によって真実は明らかにできる。彼(ジョコウィ氏)には本当に真剣になってもらいたい」。11日、南ジャカルタのKPKを訪れたノフェル氏は、同事件について内部会議を行った後、記者団に語った。
 警察出身のノフェル氏は、警察高官の関与や、事件の背後にいる有力者の存在をたびたび指摘してきた。TGPFは大統領直轄の調査組織で、過去には5月暴動(1998年)や人権活動家ムニール氏毒殺事件(2004年)に対して設置された。今回の事件でも設置するよう、KPKや人権活動家が再三訴えている。
 ジョコウィ氏は、事件発生当日に「残忍な行為で強く非難する」と述べたものの、その後はあくまで国家警察に捜査を一任する立場を維持。大統領への失望は市民からも出ており、この日午後には、大統領宮殿前でも活動家らが真相究明を求める運動を展開した。 
 KPKのブシロ・ムコダス元副委員長は「この事件はノフェル氏個人ではなくKPKという組織への攻撃だ」、選挙の公開討論会や番組司会を務めている著名ジャーナリストのナジワ・シハッブ氏は「KPKが踏み殺されようとしているのに、国は沈黙したと知ったら、次の世代は何と言うだろうか」と、それぞれKPKを通じてコメントしている。(木村綾、写真も)

11日、KPKで記者団の質問に応じるノフェル氏
11日、KPKで記者団の質問に応じるノフェル氏

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