【貿易風】中央と地方の論理

 最近までスラバヤを中心に調査をしていた。東ジャワ州は6月の統一地方首長選で、州知事のほか、18の県と市の改選が行われる。
 ジャカルタから政治を見ると、野党側は一部の急進派勢力と組んで、地方の選挙も「イスラム対反イスラム」の構図に持ち込もうとしている。
 1965年の虐殺事件を背景に、より世俗的なジョコウィおよび闘争民主党(PDIP)と共産党を結びつけ、「反イスラム」のレッテル貼りがさかんである。
 しかし地方の選挙はジャカルタとは異なる論理で動いている。中央との「ねじれ」は一般的である。日本でよくある、現職への与野党相乗りに限らない。
 例えば、東ジャワ州知事候補のコフィファ前社会相は、ジョコウィ大統領とも近く、政権側のゴルカル党、開発統一党(PPP)からの公認も得ている。しかし、政権から距離を置き、ときには野党勢力に加担する民主党も彼女への支持を表明した。
 同党州支部長で、過去2度の州知事選で対立候補となったスカルウォ現知事も選挙運動の前面に出ている。コフィファが知事になった方が、今後も影響力を残せるとの判断だという。
 対する知事候補のサイフラ・ユスフ(現副知事)は与党連合のPDIPや民族覚醒党の公認を受けた。サイフラはメガワティの夫タウフィック・キマス(故人)と懇意だった。
 コフィファもサイフラも最大のイスラム組織ナフダトゥール・ウラマー(NU)の出身、同世代の政治家である。イデオロギー的な差異も見出しにくい。両者とも知名度と組織票を兼ね備えている。
 2019年の大統領選でプラボウォ擁立を予定している野党のグリンドラ党、福祉正義党(PKS)も最後にサイフラ支持を表明した。両党は独自候補の擁立を探っていたが、断念した。
 どちらが勝ってもプラボウォにはプラスになりそうもない。西ジャワ州に次ぐ大票田で、大統領選までにプラボウォがどのような手段で挽回するのか。中央の論理からいえば、気になるのは選挙後の動向である。(見市建=早稲田大学大学院アジア太平洋研究科准教授)

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