ラグビー通し減災教育 子どもら170人参加 ジャカルタ、西ジャワ州で

 ジャカルタ特別州などでこのほど、ラグビー教室を通して日本の減災教育を伝える試みがあり、子どもたち約170人が参加した。日本ラグビーフットボール協会と東日本大震災で被災した岩手県、「ラグビーの町」釜石市が連携し、小・中学生のほとんどが助かった避難事例「釜石の奇跡」の知見や防災・減災の啓蒙(けいもう)活動を紹介した。

 スポーツを通した国際協力を推進する官民連携事業のスポーツ・フォー・トゥモローの一環。主催した独立行政法人の日本スポーツ振興センター(JSC、本部・東京都港区)によると、地方自治体との連携は初めてで、今回は2004年スマトラ島沖地震の津波被害があったインドネシアとスリランカが開催対象となった。
 インドネシアでは9〜11日、ジャカルタ特別州プラウスリブ県プラムカ島と西ジャワ州ボゴールの2カ所で開かれ、子どもら計170人が参加。岩手県文化スポーツ部の菊池太介主任が減災に関する話を紙芝居形式で紹介した後、元ラグビー日本代表の向山昌利さんがラグビーボールを使った遊びで楽しさを伝え、経験者にパスなどの技術を指導した。
 プラムカ島では、ダイビングツアーに関して現地のショップと意見交換し、地域産業復興の道も模索。菊池主任は「世界に目を向けるきっかけとなった。今回できたつながりを下地に、私たちが持つラグビーの知見や防災の知見を世界に広めたい」と力を込めた。今後も絵本などを作成し、防災・減災に関する知見を伝えていく方針。
 ラグビー教室前に訪れた国家防災庁(BNPB)では、釜石市で実際に行われている避難訓練や英国式のボートレスキューによる水難救助方法、避難道のバリアフリー化などの防災・減災啓蒙活動を紹介した。
 釜石市は「北の鉄人」と呼ばれた新日鉄釜石ラグビー部(現・釜石シーウェイブス)の活躍などで、日本全国に名をとどろかせた。近年では体育授業にラグビーを取り入れているほか、アジア初開催となる19年ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の開催12都市の一つとなる。
 太平洋に面し、1896年の陸羽地震、1933年の昭和三陸地震による津波、揺れで被災した歴史もある。地元には「津波てんでんこ」という「家族のことさえ気にせず、自分の命を守るために、てんでばらばらに逃げなさい」との教訓が伝わり、近年はこれに「他人も守る」意識を加えて考えられた防災訓練を行ってきた。
 東日本大震災発生時は、同市内小・中学生全体の99.8%に当たる約3千人が助かった。この稀有な避難事例は震災後に「釜石の奇跡」と呼ばれ、題材にしたテレビ番組が放送されるなど防災教育の手本として世界に広く紹介された。
 岩手県警などよると、東日本大震災による同県内の死者は2017年3月末現在で5135人(関連死含む)、行方不明者1122人。陸前高田市に次いで被害が大きかった釜石市は死者993人(同)、行方不明者152人。(中島昭浩)

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