「目に見えない空気感を」 鈴鹿芳康さん ピンホールカメラで 国際交流基金で写真展

 「人間の目に見えない空気感を伝えたい」――。アーティストの鈴鹿芳康さんが、日本の聖地をピンホールカメラで撮影した写真展が、26日から南ジャカルタのスミットマス1ビル内国際交流基金ジャカルタ日本文化センターのホールで開かれている。

 ことし古稀を迎えた。京都造形芸術大学名誉教授やピンホール写真芸術学会名誉会長などさまざまな顔を持つ。これまでインドネシアで企画展に3回参加したが、個展は初めて。
 多摩美術大学油絵科を出てから米国で写真を学んだ。30年前、海外を回って日本人でありながら日本を知らないことに気付いた。以来、鈴鹿さんは「変化しないものだけが残る。時間と空間を同時に写した、自然が作り出した1枚の絵と思っている」と、極小の穴を通して像を結ぶピンホールカメラを手に、世界各地で写真を撮り続けている。
 1992年、3月も終わりに近い冬の北海道天塩郡サロベツの海。流氷が出るような厳しい海だった。風速は15メートル以上、気温はマイナス20度以下。写真では静けさが漂う清らかな海に見えるが、「露光した30分のうち4、5分太陽が見えた。それ以外の25分は何も見えていなかったが、荒々しい波の中には一定のリズムがあった。ピンホール写真は見えないものを感じられる写真」と話す。
 会場には富士山や桜島など日本の聖地とされる海と山、太陽を収めた各地の写真12枚を展示。用紙は自然のものにこだわり、アワガミファクトリー(本社・徳島県吉野川市)の手すき和紙を使用している。
 ジャカルタ滞在は5度目。インドネシアを初めて訪れたのは28年前で、現在は2012年に購入したバリ州ウブドにある家と日本、諸外国を行き来する生活を送る。年2〜3回、計3カ月ほどバリに滞在し、物を作ったりいろいろな考えごとをしたりしているという。
 現在は各宗教の合掌する手を撮りためている。16年11月には中央ジャカルタの国立美術館で企画展「写真の時代」に参加し作品を披露した。「荷物は60キロ。長い旅はアシスタントは付けない主義。これを運べなくなったらリタイヤかな」。さらりと話す鈴鹿さん。製作意欲は尽きない。
 28日午後2時からは、ピンホールカメラのワークショップが開かれる。カメラとして最も原始的な仕組みを、鈴鹿さん自ら伝授する。インドネシア人が対象だが見学は自由。
 写真展は9月7日まで。入場無料。開場時間は午前10時〜午後6時。9月1〜3日は休館日。(中島昭浩、写真も)

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